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肺動脈絞扼術後の大動脈弁下狭窄に対して,塩酸ランジオロール投与が有効であった 1 例
静岡県立こども病院CCU1),心臓血管外科2),循環器科3)
中田 雅之1),大崎 真樹1),城麻 衣子2),井出 雄二郎2),中田 朋宏2),廣瀬 圭一2),藤本 欣史2),坂本 喜三郎2),田中 靖彦3),小野 安生3)

【はじめに】LV型単心室のVA-discordant症例では,経過中に大動脈弁下狭窄(SAS)が進行することがしばしば報告されている.肺動脈絞扼術(PAB)施行後急速に進行したSASに対して塩酸ランジオロール(超短時間作用型βブロッカー)が著効した症例を経験したので報告する.【症例】在胎40週 4 日2,868gで出生.日齢 2 で心雑音を指摘され当院紹介,TA2C(S-D-L),ASD,PDAと診断した.大動脈弁下は全周性に筋性組織で構成されており将来的なSASの進行が懸念されたが,前後径 = 5.6mm,BVF = 6.5mmと当面の流出路は十分保たれるであろうと判断した.その後肺血流が増加したため日齢15でPABを施行した.翌日ショックとなったがエコーで右室内腔はslit状,SAS = 1mm,area = 0.03cm2と著明な狭小化を認めこれによるLOSと診断した.心収縮は極めて良好で狭窄がdynamicなものであったため,塩酸ランジオロールの持続投与を10γで開始した.心機能,弁下部狭窄の変化をエコーで随時確認しながら40γまで増量したところ,SASの改善,尿量増加,脈圧の上昇を認めた.本来の作用である徐脈(自己心拍数80台)に対してはpacingで対応することで安全に使用可能であった.その後全身状態の改善を待って塩酸プロプラノロールに変更した.現在DKS型手術待機中であり,最終心エコーではSAS = 1.9mm,area = 0.08cm2,BVF = 1.8mmと流出路狭窄は改善傾向である.【結語】塩酸ランジオロールは術中術後の上室性頻脈の治療に使用されているが,大動脈弁下のdynamic obstructionに対しても有効であった.半減期が短く調節性に富むためエコーモニター下でのリアルタイムな調節が可能であり,特に周術期管理で有用と考えられた.

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