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Fontan循環が術後肝機能に及ぼす影響の検討
弘前大学医学部胸部心臓血管外科1),小児科2)
大徳 和之1),鈴木 保之1),山内 早苗1),福井 康三1),福田 幾夫1),佐藤 工2),高橋 徹2),米坂 勧2)

【背景】第42回総会で無脾症候群,下大静脈欠損,奇静脈結合,DORV患児においてFontan型手術を行ったが循環に順応できず肝静脈吻合のみtake downした症例について報告した.本症例では十分な強心剤投与と輸液を行ったにもかかわらず循環が破綻し肝腫大,肝機能障害を認めた.take downした後の循環は安定したことから肝静脈系の耐圧能に関する未熟性が考えられた.当施設におけるFontan型手術到達例で術後肝機能の変動につき後方視的に検討した.【対象】対象は2002年 1 月から2007年12月までにFontan循環へ到達した患者10例.内訳はDORV 7,単心室 2,三尖弁閉鎖症 1 で平均月齢は74.4カ月(25~252).【結果】術前肺動脈条件は平均でPAI = 475(350~800),肺血管抵抗2.3(0.9~4.6)単位,平均肺動脈圧13.8(9~22)mmHgであった.術前酸素飽和度は81%(75~85).術前肝機能検査では全例正常範囲内であった.手術術式はextracardiac TCPC 7,右房‐肺動脈吻合 3.1 例で共通房室弁形成術,1 例で大動脈弁形成術を併施した.麻酔はフェンタニール + ケタラールにプロポフォールまたはミダゾラムを併用する完全静脈麻酔.10例の手術時間357±72分,体外循環時間123±71分.体外循環離脱直後CVP 16±2.6 mmHg,収縮期血圧77±9mmHg,心拍数134±10 bpm.第 1 病日,第 3 病日の肝機能検査では10例中 6 例で肝逸脱酵素GOT/GPT値が1,000U/lを超えていた.特に無脾症候群の 4 例でGOT/GPT値が3,000U/l以上の高値を認め,一方で多脾症候群の 2 例では1,000U/lを超えることはなかった.しかしながらいずれの症例も退院前には肝機能は正常化していた.【考察】無脾症候群において術後一過性に肝機能障害,特に肝逸脱酵素上昇を認めた.術前肝機能や肺動脈条件に差はなく,術中に使用した麻酔薬やカテコラミン,抗生物質にも差を認めなかった.無脾症候群は体静脈や肝静脈系の形態異常を有し,本疾患群においてFontan循環が破綻する一因になり得ると思われた.

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