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術中心エコーは小児開心術の成績向上にどのように貢献するか
岩手医科大学循環器医療センター小児科1),心臓血管外科2),麻酔科3)
佐藤 陽子1),小野 ひろみ1),加賀 元宗1),高橋 信1),小山 耕太郎1),小泉 淳一2),猪飼 秋夫2),岡林 均2),小林 隆史3),星有 己枝3),門崎 衛3)

【背景】術中心エコーは,開心術において人工心肺離脱後の形態・血行動態を評価することで手術成績の向上に貢献する.当センターでは,2007年から小児の開心術に術中エコーをほぼ全例に導入した.おもに経食道エコーの有用性と問題点について,術後との比較も含め後方視的に検討した.【方法】2007年 1~12月の 1 年間の小児の心臓手術の件数は105件あった.このうちPDAなどの心外操作のみの手術を除き,85件で術中エコーを行った.新生児や3.5kg以下の小児では経心外膜,それ以上では経食道で行った.経心外膜エコーは18件で,月齢は 0~10カ月(中央値 0 カ月),体重は1.7~4.0 kg(中央値3.4 kg),経食道は67件,2~155カ月(中央値29カ月),体重3.7~41.1 kg(中央値11.1 kg)だった.【結果】経食道による重大な合併症はなかった.エコー所見により再度pump runした症例が 4 例あった.VSDの遺残短絡によるものが 3 例,三尖弁形成術後の三尖弁逆流によるものが 1 例だった.また僧帽弁形成術で,覚醒後に逆流が増加し術後 3 日に再手術した例が 1 例あった.退院時との比較では,VSDの遺残短絡が術中より退院時に増加した症例が 1 例,房室弁逆流が増強した症例は 4 例あった.肺動脈の分枝や心外導管は経食道では描出できなかった.【まとめ】心内短絡は,術中と術後のエコー所見に明らかな違いはなかった.房室弁逆流は,術中でも血圧や容量負荷などの血行動態が変わると変化する傾向があり,房室弁逆流の評価については今後検討が必要であると考えた.心機能評価やair controlの点でも有用だった.術中エコーは,手術部位の状態や術後の血行動態を把握するのに有用であった.

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