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多脾症候群,左心低形成症候群に胆道閉鎖を合併し治療方針決定に苦慮した 1 例
太田西ノ内病院小児科1),東京大学医学部小児科2),心臓外科3),小児外科4),国立成育医療センター移植免疫診療科5)
朝海 廣子1),平田 陽一郎2),豊田 彰史2),小野 博2),中村 嘉宏2),香取 竜生2),賀藤 均2),村上 新3),岩中 督4),笠原 群生5)

【症例】在胎25週に胎児エコーにて左心低形成症候群が疑われたため,当院に紹介となった.2006年12月12日,在胎36週 6 日,体重2,454gにて出生した.心エコーで単心房,単心室,大動脈閉鎖,動脈管開存(HLHS variant),左上大静脈遺残,下大静脈欠損,奇静脈結合と診断し,腹部エコーにて多脾症候群と診断した.日齢 7 に両側肺動脈絞扼術を施行した後から,灰白色便が出現した.各種検査により胆道閉鎖症と診断し,日齢42に肝門空腸吻合術(葛西手術)を施行した.術後経過は順調で,良好な減黄が得られた.Lipo-PGE1製剤の持続投与にて動脈管の開存を維持していたが,奇静脈結合であることを考えると,Norwood + Glenn手術は生後半年以上待機することが望ましいとの判断から,5 カ月時にPDAに対するstentを留置した.しかし,その直後より肝機能障害と黄疸が悪化し,6 カ月時に肝門部空腸再吻合術を施行したが減黄は得られず,真菌による敗血症や脳梗塞を合併した.Norwood手術と同時に肝機能のさらなる悪化が懸念されたため,生体肝移植の準備を整えたうえで,10カ月時にNorwood + Glenn手術を施行した.術後の循環動態は安定しており肝機能障害も出現しなかったが,手術 2 日後に突然の高カリウム血症と心停止を来し,ECMOを装着したが術後 7 日目に死亡した.【まとめ】左心低形成症候群に胆道閉鎖症を合併した症例で,生体肝移植の適応を含めた治療方針の決定に苦慮し,心不全・肝不全・感染症の管理に難渋した症例を経験したので報告する.

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