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小児心臓手術後心タンポナーデの検討
筑波大学附属病院循環器外科
金本 真也,平松 祐司,徳永 千穂,池田 晃彦,松原 宗明,榊原 謙

【はじめに】先天性心疾患術後約20%の症例で心嚢水貯留を認めるといわれている.術後心嚢水貯留は重篤な合併症を引き起こす可能性があり適切な対処が求められる.【目的】先天性心疾患術後,心嚢水貯留に伴う心タンポナーデ合併症例を後方視的に検討する.【対象】2002年 1 月より2007年12月まで当科において先天性心疾患手術を受けた症例中,術後心嚢水貯留に伴う心タンポナーデにより心嚢ドレナージを必要とした 7 症例(ASD術後 2 例,PAB術後 2 例,PAB + SFA術後 1 例,VSD術後 1 例,aortic valvuloplasty術後 1 例,7/387 = 0.018%).【結果】平均年齢は32カ月(0~117カ月),平均体重は15.2kg(2.7~49kg)であった.心嚢水貯留に対して術後平均13日目(6~31日)に心嚢ドレナージを行い,平均 9ml/kg(3.2~17.8ml/kg)の排液が認められた.心嚢ドレーンの留置期間は平均 4 日(1~6 日)であり,心嚢水の再貯留症例はなかった.初回手術後ドレーン留置期間と心嚢ドレナージまでの期間,および初回手術後ドレーン総排液量と心嚢水貯留量の間に相関を認めなかった.7 例中 4 例は有症状であったが 3 例は無症状であった.ドレナージ前後で,CTRの減少(67.0±3.2% vs 58.1±3.3%,p < 0.01),および心拍数(129±24/分 vs 116±33/分,p = 0.13),収縮期血圧(77±10mmHg vs 100±25mmHg,p = 0.01),脈圧(33±6mmHg vs 44±17mmHg,p = 0.07)等循環動態の改善が認められた.ASD術後 2 例は,それぞれ術後 6 日目と31日目に420mlと500mlの大量の心嚢水貯留を認め,初発症状はそれぞれ発熱と腹部症状であった.【結語】小児心臓手術後に心嚢ドレナージを必要とする心タンポナーデ症例の頻度は低いが,無症状や非定型的な症状を呈する場合もあり注意を有する.少量の心嚢水でもドレナージ後循環動態の速やかな改善が認められた.術後心拡大の増加を認めた場合,心嚢水の貯留を常に念頭に置き対処すべきであると考えられた.

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