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血友病Bを合併した女児に対する心房中隔欠損症根治術の経験
大垣市民病院心臓血管外科1),小児循環器新生児科2)
小坂 井 基史1),玉木 修治1),横山 幸房1),石川 寛1),石本 直良1),杉浦 友1),田内 宣生2),倉石 建治2),西原 栄起2)

【はじめに】血友病患者に対する開心術の報告はまれであり,周術期管理に関してはコンセンサスが得られていないのが現状である.今回われわれは血友病Bを合併した女児の心房中隔欠損症(以下ASD)に対して根治術を施行し,良好な結果を得たので報告する.【症例】3 歳 9 カ月の女児.生下時体重は1,580gであった.1 歳時に頭部外傷で入院した際に血友病Bと診断された.その後は外来で定期的に第IX因子活性を測定,必要に応じて第IX因子製剤(ノバクトM)補充療法が行われた.3 歳 9 カ月時の心臓カテーテル検査で,Qp/Qs:2.5,Pp/Ps:0.27のcentral type ASD(ø22 mm)と診断され,手術適応となった.手術に際しては,体重・ノバクトMクリアランス・目標とする第IX因子活性(80~100%)を基に投与量を決定,迅速にフィードバックが可能なAPTT(%)を指標に適正量を確認して周術期ノバクトM持続補充療法を行う予定とした.【経過】手術 5 日前にノバクトMをボーラス投与したのち,周術期持続投与を開始した.手術は体外循環・心停止下にcentral type ASD(ø24×12 mm)を直接縫合閉鎖した.止血に難渋することなく無輸血で手術を終えることができた.術後7日目に抜糸したのちにノバクトMの持続投与を終了した.経過中は出血傾向を含めて特に問題なく,術後12日目に退院となった.周術期の第IX因子活性(%)/APTT(%)は,投与前 4/82,開始後 3 日目77/78,体外循環前76/87,体外循環終了時92/103,ICU入室時138/96,術後 1 日目106/86であった.【まとめ】血友病Bを合併したASD根治術を経験した.ノバクトMの投与量はAPTT(%)を基準に調節したが,その目標値としては第IX因子活性80~100%が適正と考えられた.

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