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胎児診断され,出生直後に緊急BASを必要としたTGAの 3 例
神奈川県立こども医療センター循環器科1),新生児科2),心臓血管外科3),東海大学小児科4)
関根 佳織1),川滝 元良2),豊島 勝昭2),柳 貞光1),上田 秀明1),林 憲一1),康井 制洋1),麻生 俊英3),高倉 一郎4)

【背景】TGAI 型において出生後の経過予想に卵円孔,動脈管の正確な情報が必要とされるが胎児診断での報告は少ない.【方法と結果】 2001~2007年の 6 年間に当院の胎児エコーでTGAI型と診断され,出生直後に緊急BASを必要とした 3 症例の出生前の卵円孔,動脈管の情報と出生後の経過について報告する.症例 1:37週で卵円孔閉鎖傾向,動脈管狭窄所見あり.38週(分娩前日)に卵円孔・動脈管閉鎖と診断.出生直後から高度の低酸素血症と呼吸障害のため生後 1 時間で緊急BAS施行し,日齢 3 にJatene手術.症例 2:34週で卵円孔閉鎖傾向あり.出生時にPGE1投与開始,SpO2 70%(上下肢の差なし).SpO2低下したために出生後 3 時間でBAS施行.RDS合併のためサーファクタント投与,日齢 3 でJatene手術.症例 3:39週の時点で卵円孔・動脈管は十分に開存と診断していたが,出生直後より高度の低酸素血症,PPHN合併.PGE1投与,NO吸入療法も効果ないため,出生後 3 時間でBAS施行.日齢 7 にJatene手術施行.【考察】緊急BASが必要となった 3 症例のうち,胎児診断で卵円孔と動脈管が閉鎖で極めて重篤になると予測可能であったのは,1 症例のみであり,他の 2 例は予測困難であった.その理由として,胎児エコーでリスクが低いと予測されても,出生後に肺血管抵抗が上昇するようなRDS,MAS,気胸合併等の症例ではリスクが高くなること,経過中に卵円孔と動脈管開存を確認しても出生直前に閉鎖する可能性があること,現在の胎児エコー技術では,卵円孔と動脈管の評価が十分でないことが考えられる.今後さらなる検討が必要である.

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