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Jatene手術における単回心筋保護法の妥当性
北海道大学病院循環器外科1),小児科2)
夷岡 徳彦1),村下 十志文1),橘 剛1),松居 喜郎1),村上 智明2),上野 倫彦2),武田 充人2),八鍬 聡2),古川 卓朗2)

完全大血管転位(TGA)に対する手術成績は,手術手技,人工心肺,心筋保護の向上に伴い安定した結果を得ている.今回,TGAに対するJatene手術における単回投与による心筋保護法を複数回投与法と比較検討した.【対象と方法】2000~2007年まで,TGAに対するJatene手術は15例で術後呼吸不全で失った 1 例を除く14例(VSD合併 5 例)を対象とした.心筋保護液(CP)は,ミオテクターと回路血液を 1:1 で混合し15°Cに調整した.2004年以前は膀胱温20°C,2005年以降は膀胱温23°Cまで冷却した.CP投与を初回のみ行った単回投与群(n = 7)と30分ごとに選択的に行った複数回投与群(n = 7)に分けた.複数回投与群にPAB + BTS後(2 カ月),arch repair + PAB後(1 カ月)を含むが,ほかは生後 7~17日に手術施行.両群間(複数回投与群 vs 単回投与群)の手術時体重(3.3±0.3 vs 3.2±0.4kg),術前LVDd(19.6±2.9 vs 22.4±2.9mm),LVFS(33.8±6.5 vs 37.3±1.7%),大動脈遮断時間(86±11 vs 114±38min)に有意差なかった.【結果】術後カテコラミンインデックスが10以上であった時間(21±21 vs 7±12h),挿管時間(50±24 vs 47±20h),ドレーン留置日数(3.6±0.8 vs 3.0±0.6days),ICU滞在日数(5.1±1.1 vs 3.4±1.4days)に有意差なかった.術前後のLVDd変化(3.43±3.89 vs -3.84±2.38mm:p = 0.001)は単回投与群で減少していたが,LVFS変化(-2.1±8.3 vs -7.1±4.3%)に有意差なかった.【結論】TGAに対するJatene手術では,初回心筋保護液投与のみとしても大動脈遮断時間90分までは,術後心機能回復に悪影響はないと考えられた.

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