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川崎病後遺症例に施行した冠動脈内血管内エコーについて—冠動脈病変の時間経過による内中膜変化
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野1),新潟市民病院小児科2)
沼野 藤人1),星名 哲1),長谷川 聡1),鈴木 博1),佐藤 誠一2),内山 聖1)

【はじめに】われわれは川崎病後遺症例に対する冠動脈の評価として,血管内エコー(intravascular ultrasound:以下IVUS)を用いている.進行性の局所性狭窄(localized stenosis:以下LS)の主たる原因は血管内中膜の肥厚であるが,LSを認めない部位でも内中膜肥厚を認めていることを以前に報告した(第39回日本小児循環器学会総会).今回,われわれは複数回IVUSを施行した川崎病後遺症例の内中膜経時変化について検討したので報告する.【対象および方法】解析期間:1998年11月~2007年 9 月,症例数:16症例35回(男性11例24回,女性 5 例11回),施行時年齢:12歳 9 カ月~29歳 4 カ月(中央値20歳 3 カ月),施行回数:延べ44回(LCA27回,RCA17回),施行間隔:2 年 1 カ月~6 年 0 カ月(中央値 3 年 6 カ月).冠動脈造影の後,IVUSを用いて冠動脈拡張部および瘤内と,冠動脈基部(segment 1 および 5)を観察した.各部位で血管壁厚,内腔径,内中膜肥厚径を測定し,それぞれの経時変化を検討した.【結果】LCA基部(segment 5)の血管壁厚,LCA瘤の内中膜肥厚,RCA瘤の内中膜肥厚は有意に増加し,LCA瘤の内腔は有意に減少した.LCA瘤の血管壁厚は増加傾向にあった.RCA基部(segment 1)・RCA瘤の血管壁厚,RCA基部・RCA瘤の内腔径に有意な変化は生じなかった.【考察】川崎病後遺症例の冠動脈の病変部では時間経過とともに内中膜肥厚が進行し,内腔が狭窄することが確認された.また,造影で壁不整や明らかな拡張を認めない,退縮と考えられる冠動脈でも血管壁は肥厚しており,川崎病後遺症例の内中膜肥厚は拡張部のみならず退縮部でも進行していた.内中膜肥厚を認める冠動脈は血管拡張能や冠予備能の低下を来すことは知られており,川崎病後遺症例では瘤の退縮によるLSの出現だけではなく,血管機能低下が広範囲で出現する可能性があると考えられた.

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