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川崎病ステロイド併用療法の適応と問題点について—1 施設29症例よりの検討
佐々総合病院小児科1),武蔵野赤十字病院小児科2),東京医科歯科大学医学部小児科3)
清原 鋼二1,2),佐藤 裕幸1,2),土井 庄三郎3)

近年,γグロブリン大量療法の出現とともに,川崎病の治療は格段の進歩を遂げ,心後遺症の発生率も著しく減少している.しかしながら,5~10%の症例でγグロブリン不応例が存在し,さまざまな治療が試みられるも,まだ十分とはいえない状況であった.以前はその冠動脈瘤の発生率などから,使われなくなっていたステロイド剤の併用療法がにわかに注目され,良い成績を上げてきている.佐々総合病院でも上記のようなγグロブリン療法の不応例などに1998年よりステロイドの併用療法を行い,良好な結果を得ている.初期の例も含め,今回検討報告することとした.1998年 1 月より2006年 3 月までの間に川崎病を発症し,治療目的にて佐々総合病院小児科に入院した患児は207名であった.そのうちさまざまな理由でステロイド併用療法を行った29例について後方視的に検討した.川崎病にて入院し,アスピリン,γグロブリン療法等にて解熱しないためにステロイド使用した症例が29例.それ以外の適応で使用した症例が 3 例.ステロイド併用例で再燃を認めた例はステロイド早期中止例で 1 例.同じ例の 1 例のみ,冠動脈瘤を形成した.他のステロイド使用症例では,全例後遺症なく治癒した.ステロイド併用を必要としなかった178例のうち心後遺症は 3 例であった.ステロイド使用例,非使用例を含めた心後遺症の発生は 4 例のみで 1 年以上心後遺症が残ったのは 2 例のみ,巨大冠動脈瘤の発生はなかった.川崎病ステロイド併用療法導入により,川崎病全体としての心合併症の発生は導入前より減少し,近年の統計の報告の発生率と比べても減少していた.川崎病におけるステロイド併用療法は心後遺症の発生を防ぐためのよい治療オプションである.今後その治療法が,さらに適切なものになるよう,投与のタイミング等,いくつかの注意点も含め検討したので報告する.

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