P-66
γグロブリン不応例に対してのinfliximabの使用経験
九州厚生年金病院小児科1),九州大学医学部小児科2)
岸本 小百合1),宗内 淳2),熊本 愛子1),渡辺 まみ江1),森鼻 栄治1),山村 健一郎1),大野 拓郎1),城尾 邦隆1)

【背景】川崎病におけるγグロブリン療法(IVIG)の不応症例は約10~20%存在するとされている.現在IVIG不応例の治療に確立されたものはない.近年,炎症性サイトカインを抑制する目的でTNF-αモノクローナル抗体(infliximab)の川崎病治療への応用が試みられているがその臨床効果については不明な点も多い.今回超大量のIVIGに不応の 3 症例にinfliximabを使用した経験を報告する.【症例】〈例 1〉3 歳男児,発熱とリンパ節腫脹にて入院.IVIG 1g/kg 2 回とステロイドパルス療法に不応で股関節炎症状を呈していた.18病日にinfliximab 5mg/kgを投与,炎症反応の低下はあるが解熱せず左冠動脈(S6)に5.6mmの中等度冠動脈瘤も出現したため21病日にIVIG 2g/kg 1 回を追加し解熱.〈症例 2〉2 歳男児,発熱とリンパ節腫脹にて入院.IVIG 1g/kg 2 回,追加の2g/kg 1 回に不応で多発性の小関節炎症状が出現.8 病日にinfliximab 5mg/kgを投与し解熱,24病日に発熱と関節症状が再燃しアスピリン50mg/kg/日にて改善,冠動脈病変は生じなかった.〈症例 3〉8 カ月男児,発熱と川崎病主要 6 症状を呈し入院,紅斑・びらんといった強い皮膚症状を伴っていた.IVIG 2g/kg 2 回に反応せず,8 病日と14病日にinfliximab 5mg/kgを投与.炎症反応と症状の改善はあったが解熱なく3.4mmの両冠動脈拡張が出現,17病日にステロイドパルス療法(m-PSL 30mg/kg)を行い解熱.【まとめ】infliximab投与後,症例 1 は追加のIVIG,症例 2 はアスピリン投与,症例 3 はステロイドパルス療法によって改善した.いずれの症例においてもinfliximabは十分に有効とはいえないが,炎症反応の改善と症状の鎮静化が得られ,巨大冠動脈瘤の形成はなかった.本薬剤には心不全などの重篤な副作用も言われているが,今回の 3 症例に副作用はみられなかった.川崎病のIVIG不応例に対するinfliximabの位置付けにはまだ一定の見解はなく,適応症例や投与量の判断には症例の集積がまたれる.

閉じる