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日齢35に発症しシクロスポリンが有効であった難治性川崎病の 1 例
富山大学附属病院小児科
伊吹 圭二郎,齋藤 和由,渡辺 一洋,渡辺 綾佳,廣野 恵一,上勢 敬一郎,市田 蕗子,宮脇 利男

【はじめに】乳児期発症の川崎病は不全例が多く,治療抵抗性で冠動脈病変をより高頻度で合併する.今回われわれは日齢35に発症し,免疫グロブリン大量療法およびステロイドパルス療法に不応であったため,シクロスポリン投与を行い寛緩し得た難治性川崎病の 1 例を経験した.【症例】日齢35に発熱,発疹を認めたため紹介医に入院し,その後川崎病と診断され第 3 病日に免疫グロブリン投与(2g/kg/day),アスピリン内服(30mg/kg/day)による治療を開始した.症状が改善しないため第 6 病日に免疫グロブリン(2g/kg)の再投与を行い,ウリナスタチン(5,000IU/kg×3/day)を開始,第 9 病日よりメチルプレドニゾロンのパルス療法(30mg/kg/day)を 3 日間施行し,プレドニン2g/kg/day投与を開始した.その後も症状の改善がみられず,心エコーで両側冠動脈瘤の合併を認め,第14病日に当科へ転院となった.入院時,白血球27,070/γl,CRP 20.2mg/dlと炎症反応は高値であり,シクロスポリン(1.5mg/kg/day)の投与を開始し,冠動脈瘤に対してヘパリンの持続投与,アスピリン内服による抗凝固療法を開始した.CRPは第16病日に13.1mg/dl,第24病日に2.6mg/dlと軽快傾向となったが37°C台の微熱と発疹,眼球結膜充血は持続した.第40病日に免疫グロブリン(2g/kg/day)の再投与を行い,症状の寛緩を得ることができた.【まとめ】免疫グロブリン大量療法,ステロイドパルス療法に抵抗性であり,冠動脈瘤を合併した難治性川崎病に対して,シクロスポリンを併用することで良好な経過を得ることができた.治療抵抗性川崎病に対してシクロスポリンが治療の選択肢となり得ると思われた.また,本症例において各種サイトカインを測定し,その他の川崎病症例と比較検討したので併せて報告する.

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