P-70
川崎病急性期のBNP
久留米大学医学部小児科1),久留米大学循環器病センター2),聖マリア病院小児科3)
岸本 慎太郎1),須田 憲治1,2),籠手 田雄介1),工藤 嘉公1),伊藤 晋一1,3),石井 治佳1),西野 裕1),寺町 陽三1),家村 素史1,2),吉本 裕良1),松石 豊次郎1)

【目的】心不全の指標として臨床応用されているBNPと血行動態指標との関係を,川崎病急性期において検討する.【方法】対象は,急性期にBNP,WBC,CRPを測定し,心エコー検査を施行した42例.心エコーによりLVDdと冠動脈の最大径(体表面積からそれぞれz値を計算),LVEF,大動脈駆出時間(ET),PEP,大動脈最高流速,僧帽弁E波,A波,ドプラによるMPI,心室中隔基部のtissue Dopplerによる,左室駆出時間(T-ET),ICT,IRT,Ea, Aa, MPI,E/Eaを計測した.BNPは対数変換し,BNPとWBC,CRP,心エコー上の各種指標との相関を検定した.【成績】年齢は2.9±2.2(0.4~7.9)歳,病日は5.9±2.6日.CRP 9.1±4.9(2~25mg/dl),WBC 13,000±6,000(5,000~43,900/cmm).10例は2.5SD以上の一過性の冠動脈拡張(max 2.9)を認めた.BNPは122±320(0~1,885)pg/mlで,42例中25例(60%)は,異常値(18pg/ml以上)を示した.心エコー指標のうち,Z-LVDd(r = 0.35,p < 0.03),LVEF(r = 0.47,p < 0.002),T-ET(r = 0.42,p < 0.01),Ea(r = 0.34,p < 0.05),E/Ea(r = 0.44, p < 0.02)がlog(BNP)と相関したが,冠動脈最大径とは相関しなかった.BNPと心エコー指標との重回帰分析では,LVEFのみが有意に相関した.しかし,実際の平均LVEFは71±9%で,臨床的な収縮能の低下(LVEF < 60%)はわずかに 3 人で,残りのLVEF ≧ 60%の39例のBNPは79±163(0~929)pg/mlであった.WBC(r = 0.39,p < 0.02)とCRP(r = 0.51,p < 0.001)はともにlog(BNP)と正相関し,心エコー指標に,この二つを加えて重回帰分析すると,CRPが最もよく相関した(p < 0.01).【結論】川崎病急性期では正常心機能にもかかわらずBNPは上昇していることが多く,よほど高くない限り心不全の指標とはなりにくい.このBNPの上昇には,炎症が関与している.

閉じる