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64列multislice CTによる川崎病冠動脈瘤の検討
福島県立医科大学小児科
青柳 良倫,桃井 伸緒,遠藤 起生,三友 正紀,福田 豊,細矢 光亮

【背景】近年multislice CT(MSCT)により,成人領域では冠動脈病変の評価が可能となってきているが,小児の報告は少ない.【目的】MSCTにより川崎病冠動脈病変を描出し,心エコー検査と,心臓カテーテル検査による冠動脈造影と比較検討することにより,MSCTの有用性を評価する.【対象と方法】2006年 9 月から2007年12月までにMSCTを施行した川崎病既往の14症例(年齢 2~23歳:中央値 9 歳)を対象とした.心電図同期下で64列MSCTを用いて造影撮像し,右冠動脈起始部,左冠動脈主幹部,左前下行枝,回旋枝,冠動脈瘤の血管径を計測し,心エコー検査,冠動脈造影による計測値と比較した.【結果】MSCTと心エコー検査における計測値間には,y = 0.14 + 0.99x,r = 0.94,p < 0.0001と極めて良好な相関を認めた.MSCTと冠動脈造影では,y = 0.32 + 0.92x,r = 0.83,p < 0.0001と相関はやや不良であったが,冠動脈造影の際のキャリブレーションの影響が示唆された.MSCTでは冠動脈造影で認められた動脈瘤12個すべての検出が可能であったが,心エコー検査では動脈瘤の検出は 8 個にとどまった.描出できなかった 4 個の動脈瘤の部位はAHA分類でsegment 2 が 2 個,segment 3 が 1 個,segment 7 が 1 個であった.また,MSCTでは石灰化病変に加えて,2 症例において内膜肥厚所見の検出が可能であった.心エコーでは石灰化と内膜肥厚の評価は困難であり,2 症例とも肥厚した内膜の外側を計測していた.冠動脈造影では,石灰化と内膜肥厚所見はともに不明瞭であった.【結論】MSCTは血管径の測定や内膜病変の検出が可能であり,動脈瘤の検出に関しても冠動脈造影と同等の精度であった.加えて,外来で短時間に行うことができることから,冠動脈病変のスクリーニングや経過観察に有用と考えられた.

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