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体重30kg以上の年長児川崎病患者に対するγグロブリン投与量の検討
済生会宇都宮病院小児科
高橋 努,小島 拓朗,井原 正博

【背景】川崎病にγグロブリン大量療法(IVGG)2g/kgが行われるが,副作用として循環容量負荷や過粘稠症候群には注意が必要で,大量投与が冠動脈拡大に関与する可能性も指摘されている.年長児では100gを超える投与量にもなり得る.一般にIVGG 2g/kgにて血清IgGは約2,000mg/dl(以下単位略)上昇し,不応例や冠動脈拡大例では上昇量が少ない傾向にある.逆に年長児でもIgGが2,000上昇すれば,IVGG 2g/kg相当投与できたと仮定でき,投与量の調節が可能と考えた.【方法】体重30kg以上の患者 3 人を対象.循環容量負荷を考慮し 2g/kgを1g/kgずつ連日に分割.1g/kgの翌日にIgGを測定し 2 日目の投与量を調節.すなわち,過粘稠と有効性を考慮し4,000を超えず,かつ上昇量が2,000となるようにした.【症例 1】11歳女児,体重30kg.6/6項目で発熱 5 日目に治療開始.IVGG 1g/kgでIgGは1,140→2,440.上昇量1,300で 2 日目0.6g/kg投与.IgGは2,510までしか上昇しなかったが解熱.冠動脈病変なし.【症例 2】11歳男児,体重51.5kg.4/6項目で発熱 8 日目に治療開始.IVGG 1g/kgでIgGは1,040→2,970.上昇量1,930で 2 日目は投与せず.不応のため,0.6g/kg追加し解熱.IgGは3,720.冠動脈病変なし.【症例 3】8 歳男児,体重39kg.6/6項目で発熱 5 日目に治療開始.IVGG 1g/kgでIgGは1,210→2,650.上昇量1,440で 2 日目0.5g/kg投与し解熱.IgGは3,840.左冠動脈起始部に3.7mmの一過性拡大を認め,退院時には2.5mmに正常化.【考察】副作用は認めなかった.1 名に冠動脈の一過性拡大を認めたが,冠動脈瘤の合併なし.年長児では効果と副作用を考慮し,IgGを確認しながら投与量を調節することは有用である.

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