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肺静脈狭窄に対して薬剤溶出ステントを留置した無脾症,総肺静脈還流異常症の 1 例
聖隷浜松病院小児循環器科1),心臓血管外科2)
中嶌 八隅1),武田 紹1),小出 昌秋2),國井 佳文2),梅原 伸大2),渡邊 一正2)

【はじめに】総肺静脈還流異常症術後の肺静脈狭窄は進行性で,治療に抵抗性を示す予後不良な病態である.今回われわれは肺静脈狭窄を来した無脾症,総肺静脈還流異常症術後の症例に薬剤溶出ステントを留置したので報告する.【症例】2 歳男児.診断はasplenia,SRV,CA,CAVV,mild PS,TAPVC(III),bil SVC.日齢13に肺動脈絞扼術,肺静脈還流異常修復術を施行した.術後肺静脈狭窄が出現し,1 歳時に肺静脈狭窄解除術,1 歳 8 カ月時にsuture less techniqueで左肺静脈狭窄解除を行ったが,右肺静脈は細く手術不能だった.1 歳10カ月時にシロリムス溶出ステント(SES:Cypher 3.5mm×18mm)を右肺静脈に留置した.2 歳 1 カ月時,左肺静脈狭窄が増悪し,左肺静脈を左上大静脈に吻合した.その際にステントの開存が確認されたが,3 カ月後の造影CTではSESより末梢側での右肺静脈閉鎖と,左肺静脈と上大静脈の吻合部の狭窄が確認された.2 歳 6 カ月時に左肺静脈にSES 3 本(3.5mm×13mm,3.5mm×8mm,3.5mm×8mm)を追加留置した.術後 4 カ月のカテーテル検査では,左下肺静脈はSES遠位側で強度に狭窄していた.左上肺静脈はSES近位側で軽度狭窄していたが,開存が確認された.血管内エコーではSES内では内膜の増生がなく,狭窄部はいずれもSES外であることが確認できた.狭窄部に対して再拡張を行った.【考案】SES内では肺静脈内膜の増生が抑えられたが,ステント外では狭窄病変が進行することがあると確認された.ステント内の狭窄を来しにくいことは大きな利点であるが,ステント外の狭窄の進行に対して,再拡張を繰り返す必要はあると考えられた.【結語】薬剤溶出ステントは報告例があまりないが,肺静脈狭窄に対して治療法の一つになり得ると考えられた.

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