P-84
乳児における動脈管コイル塞栓術—その意義と問題点
広島市民病院小児循環器科
木口 久子,鎌田 政博,中川 直美

【背景】1 歳未満で動脈管開存(PDA)のコイル塞栓術を行う場合,コイルの過剰突出,脱落回収,大腿動脈閉塞などの合併が強く懸念される.【目的】PDAコイル塞栓術を 1 歳未満で行うことの意義,問題点について明らかにすること.【対象・方法】過去 8 年間に塞栓術を行ったPDA 137例中,施行時 1 歳未満であった22例〔男女比 7/15,月齢8.4±2.3Mn(2~11Mn,≦ 6Mn:8 例),体重7.7±1.6kg(4.6~10.8kg)〕の塞栓法,治療成績,合併症について検討した.【結果】PDA最小径2.5±1.2(0.7~5.2)mm,Qp/Qs 1.8±0.65(1.04~3.5,≧ 2:8 例),透視時間20.0±13.0(8~57)分であり,PH(m-PAP ≧ 25mmHg)を 7 例,合併心奇形を 3 例(ASD 1,VSD 2)に認めた.塞栓方法:detachable coil(21例),Gianturco coil(1), platinum coil(1)を第一コイルとし,PA/Ao側から同時(5),PA側(12),Ao側(5)からアプローチした.11例で複数コイル(2~4 個)を留置した.術直後には12例で遺残短絡を認めたが,複数コイル留置 7 例を含む 9 例は経過観察中に自然閉鎖した.溶血を合併した 1 例を含む 2 例で再塞栓を行った(ほか 1 例経過観察中).合併症:コイル脱落 1 例,溶血性貧血 1 例,コイル突出による血管狭窄や大腿動脈閉塞は認めなかった.術後,体重は増加(-1.62SD vs 0.95SD),PH例のPA圧もほぼ正常化した.【考察】1 歳未満でのコイル塞栓は,体重増加,肺高血圧の改善に有効で,比較的安全に施行できた.動脈管は体格に比して大きく,複数コイルを用いても術直後の遺残短絡は少なくなかったが,経過観察中にほとんどが自然閉鎖しており,コイルの過剰突出,脱落・遊離などのリスクを考慮すると,溶血を合併しない程度の遺残短絡については経過観察が妥当と考えられた.

閉じる