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房室副伝導路と心房‐束枝副伝導路(atrio-fascicular Mahaim fiber)を合併した 1 例
日本赤十字社和歌山医療センター心臓小児科1),福原医院2)
福原 仁雄1,2),芳本 潤1),梶山 葉1),豊原 啓子1),中村 好秀1)

【症例】17歳男児.小学校 2 年生の心臓検診でデルタ波を指摘され,年 4,5 回の動悸があった.12歳時に電気生理検査(EPS)を施行した.20極の電極カテーテルを三尖弁輪(TA)に配置したところ,TA後外側に心室最早期興奮部位が認められた.心室期外刺激により心拍数145/分,右脚ブロックの頻拍が誘発され,TA後外側に心房最早期興奮部位が認められた.同部位で高周波通電(CA)を行ってデルタ波は消失した.しかし,プロタノール負荷中の心房期外刺激により心拍数185/分,左脚ブロック型の頻拍が誘発され,冠状静脈洞開口部付近に心房最早期興奮部位が認められた.順伝導のない房室副伝導路(URAP)と考えてCAを追加したが,副伝導路の離断を確認できないまま頻拍は誘発されなくなった.その後も年に 1,2 回の動悸があり,17歳時にEPSを再施行した.心室期外刺激により心拍数140/分,左脚ブロック + 左軸偏位型の頻拍が誘発された.CARTOシステムを用いた心室ペーシング中の心房mappingでヒス束近傍に心房最早期興奮部位を認め,URAPは否定された.TA外側で心房ペーシング中にヒス束電位に先行する尖鋭な電位(M電位)が記録され,心房‐束枝副伝導路(AFM)を順行し,右脚‐房室結節を逆行する房室回帰性頻拍と診断した.M電位を標的にCAを行ってAFMは離断された.合併症はなく,1 年間の観察中に頻拍の再発を認めない.【考察】術後の安静時心電図は右脚ブロックを示し,術前は右脚がAFMを介して興奮していたものと考えられた.AFMによる頻拍ではTAから離れた部位に心室最早期興奮部位があり,弁輪に配置した多極カテーテルによる評価では診断が困難であった.

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