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10歳未満で大動脈基部置換術を施行した 3 例
山形大学医学部小児科1),第二外科2),山形県立日本海病院小児科3)
仁木 敬夫1),鈴木 浩1),小田 切 徹州1),吉村 幸浩2),前川 慶之2),田邉 さおり3)

【はじめに】小児期に大動脈基部置換術を行うことはまれである.10歳未満の大動脈弁輪拡張症(AAE)の 3 例に大動脈基部置換術を行ったので報告する.【症例 1】7 歳の女児.身長129cm,体重19kg.家族歴のないMarfan症候群で,1 歳ごろからAAEが進行し,7 歳でValsalva洞最大径が56mmで中等度の大動脈弁逆流(AR)を認め,SJM弁23mmを用いたBentall手術を行った.現在19歳で経過は良好である.【症例 2】8 歳の女児.身長135cm,体重27kg.家族歴にMarfan症候群はない.頭痛と発熱が出現し,心雑音を指摘された.AAE,中等度の大動脈弁逆流とCRP陽性がみられ,胸部造影CTで大動脈解離と診断した.Valsalva洞最大径が28mmで,中等度のARと軽度の僧帽弁逆流を認めた.生体弁(19mm Mosaic porcine弁)を用いて大動脈基部置換術を施行した.大動脈の病理所見で好中球の浸潤と弾性線維の断裂があり,大動脈炎症候群と診断し,ステロイド療法を開始した.術後,中等度の僧帽弁逆流を認める.【症例 3】8 歳の女児.身長117cm,体重20kg.家族歴にMarfan症候群はない.微熱と食欲不振があり,心雑音を指摘された.上行大動脈最大径が70mmと著明に拡大したAAEで,中等度のARがみられた.生体弁(19mm Freestyle弁)を用いて大動脈基部置換術を施行した.大動脈の病理所見で炎症細胞の浸潤はなく,中膜の弾性線維の断裂がみられた.経過は良好である.【結語】小児のAAEに対して大動脈基部置換術を施行し,良好な成績を得た.今後も長期にわたる慎重な経過観察が必要である.

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