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家族性異所性再発性心臓粘液腫の 1 例
大垣市民病院胸部外科1),小児循環器新生児科2)
石本 直良1),玉木 修治1),横山 幸房1),石川 寛1),杉浦 友1),小坂 井 基史1),田内 宣生2),倉石 建治2),西原 栄起2)

【はじめに】心臓粘液腫は心臓腫瘍のなかで最も頻度が高く,組織学的にはほぼ良性であるがまれに再発を来す.今回われわれは左室粘液腫手術後に右室,左房と異所性に粘液腫が再発し,再手術を施行した 1 例を経験した.またこの症例の母親も異所性再発性心臓粘液腫の既往がありまれな家族発症例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告する.【症例】13歳の女児.12歳時に左室粘液腫(乳頭筋由来)に対して腫瘍切除と僧帽弁置換術が施行された.口唇,足底に色素沈着を認めcomplex typeの粘液腫と考えられたこと,母親にも異所性再発性心臓粘液腫の既往があったことから術後定期的に注意深くUCGによる経過観察を続けていた.初回手術 1 年後に左房内に腫瘤の出現を認め,さらにその 2 カ月後に右室内にも腫瘤を認めた.病歴から考えて心臓粘液腫の再発が最も考えられ,初回手術後 1 年 3 カ月の時点で再手術を施行した.通常の体外循環下に右房を切開すると腫瘤は三尖弁中隔尖直下に存在し,大きさは20×10mmでやや広基性の形態であった.腫瘤は三尖弁との連続性はなく付着した右室心筋とともに一塊として切除した.続いて経中隔的に左房腔内に到達,右室腫瘤と同様に広基性で15×10mm大の腫瘤を確認し,これを左房内膜とともに一塊として切除した.術後の病理組織診は豊富な粘液性の間質と散在性に分布する紡錘形細胞からなる粘液腫であり,初回手術時の摘出標本と同様の所見であった.術後経過は順調で,引き続きUCGによる経過観察を続けているが,術後 6 カ月時点で再発は認めていない.【まとめ】家族性異所性再発性心臓粘液腫の 1 例を経験した.粘液腫が疑われ口唇,足底に色素沈着を認める症例はcomplex typeである可能性が高く,異所性に再発する危険性も高いとの報告があり,術後も定期的に注意深い経過観察を続けることが重要であると思われた.

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