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成人期に診断された不完全型重複大動脈弓の 1 手術例
横浜市立大学附属病院心臓血管外科
長 知樹,益田 宗孝,磯松 幸尚,町田 大輔,鈴木 伸一

【症例】52歳男性.【現病歴】近医で胸部大動脈瘤を指摘され手術目的に当院受診.【経過】3D-CTで重複大動脈弓(Stewart分類 1B)の胸部大動脈瘤,動脈管開存症と診断した.頸部 4 分枝の再建には時間がかかることが考えられたため,脳保護は脳分離体外循環の方針とした.MRAで左椎骨動脈の狭小化を認めたため,脳分離体外循環のカテーテルは左総頸動脈,右総頸動脈,右鎖骨下動脈に挿入する方針とした.【手術】脳分離体外循環を使用し,上行弓部下行置換頸部 4 分枝再建術を行った.まず中枢吻合を施行し冠動脈還流を再開させ,続いて頸部 4 分枝を再建.最後に右開胸下で末梢吻合を行った.解剖学的形態を考慮し 5 分枝付きの人工血管を作成することで,解剖学的に無理なく再建することが可能であった.【考察】重複大動脈弓は先天性心疾患でも 1~2%とまれである血管輪の分類の一つであり,おもにStewartの分類が使われる.本症例は一側弓閉鎖の重複大動脈で 1B型と思われた.一般的に血管輪は気道や食道の圧迫症状を伴うことが多く,見つかり次第手術することが多いが本症例は周囲臓器の圧迫症状なく成人し,右側大動脈弓の精査で見つかった非常にまれな症例であると考えられた.本症例は胸部大動脈瘤の形成と動脈管開存症を合併することで感染のハイリスクであることより手術適応と判断した.今回われわれは成人期に診断された不完全型重複大動脈弓の 1 手術例を経験したので報告する.

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