P-95
小児心臓外科における総括的低侵襲化の恩恵
東邦大学医療センター大森病院心臓血管外科1),救命救急センター2)
小澤 司1),浜田 聡1),益原 大志1),原 真範1),寺本 慎男1),藤井 毅郎1),塩野 則次1),渡邉 善則1),吉原 克則2),高梨 吉則1),小山 信彌1)

【背景】小児心臓外科において縮小胸骨正中切開による低侵襲心臓手術(MICS)が普及したが,MICSの利点として美容面以外に,いかなる臨床的恩恵がもたらされているかを検討した.【対象と方法】2004年以降,縮小胸骨正中切開を基本に以下の付加的因子を併せた概念を総括的低侵襲(combined MICS)として導入した. (1)抗生剤縮小投与,(2)連続縫合によるVSDパッチ閉鎖やTOF修復における肺動脈弁輪温存(狭小肺動脈弁輪症例は除外),(3)DUF/MUFの積極的施行と人工心肺充填量削減,(4)早期抜管(オペ室抜管含む)等が付加的因子である.今回,再手術例と新生児例を除外し,12歳以下のASD with/without PS,VSD with/without PH,VSD with DCRV or PS,TOFの小児心臓手術例を対象とし,combined MICS導入以後のM群:42例と,導入以前の対象C群:40例をretrospectiveに比較検討した.【結果】手術時間と術後人工呼吸時間については,C群に比べM群で有意に短縮されていた(p < 0.05).大動脈遮断時間もM群において短い傾向を認めた(p = 0.06).術後炎症反応(WBC,CRP)は群間で有意差を認めなかったが,M群において術中術後の最低HbとHct値が高く維持されていた.さらにM群ではドレーン排液量,輸血量が少なく,ドレーン挿入期間,ICU滞在期間,術後入院期間も短縮されていた(おのおのp < 0.05).また抗生剤投与期間が有意に短かったM群(p < 0.0001)において,SSI発生率が低い傾向にあった(M群0/42例,C群3/40例,p = 0.11).【考察と結語】総括的低侵襲化によって,多くの臨床的恩恵がもたらされていることが示唆された.ただし付加的因子が相互作用した影響も考えられ,個々の因子については今後の検討を要する.

閉じる