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小児僧帽弁位におけるSt. Jude Medical Regent弁の使用経験
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科学分野1),小児科学分野2)
渡辺 弘1),高橋 昌1),若林 貴志1),林 純一1),鈴木 博2),長谷川 聡2),星名 哲2),沼野 藤人2)

【はじめに】小児は体格が小さく,弁輪径も小さいという解剖学的な特徴から大きなサイズの人工弁を縫着することは不可能である.また,患児の成長を考慮して,できるだけ大きな弁口面積を有する人工弁の選択が必要である.今回われわれは従来の人工弁に比べて弁口面積が拡大された大動脈弁位用のSt. Jude Medical(SJM)Regent弁を小児の僧帽弁置換術(MVR)に用いたので報告する.【症例】完全型心内膜床欠損症術後にMVRを施行した 2 例.〈症例 1〉11歳,ダウン症候群.身長127.5cm,体重23kg.1 歳で心内修復術を施行し,僧帽弁閉鎖不全(MR)のため,4 歳時(身長82.5cm,体重8.5kg)にSJM standard 21を用いてMVRを施行した.術後は人工弁機能に異常は認められなかったが,体の成長にしたがってMSを来した.〈症例 2〉9 歳,左側相同,両側上大静脈,下大静脈欠損,半奇静脈接合を合併.2 歳時に心内修復術,4 歳時にcleft縫合術後,MSRとなった.【結果】症例 1 では人工弁摘出後の弁輪部は硬い瘢痕を形成して柔軟性がなく,23mmの人工弁は挿入不可能のためにSJM Regent 21mmを選択した.症例 2では弁輪が狭小であり,21mmの人工弁縫着しかできなかったため,SJM Regent 21mmを選択した.弁置換は,通常と同様にeverting suture techniqueでintra-annularに縫着した.弁の可動性に問題なく,フレックスカフは弁輪との接合が良好であった.2 例とも術後経過は順調で,心エコーではMSの所見なく,現在,外来で経過観察中である.【結語】(1)小児の僧帽弁位にSJM Regent弁を縫着することに際して技術的には問題なかった.(2)狭小弁輪に可及的大きな弁口面積を得ることが可能であった.(3)SJM Regent弁は大動脈弁位用の人工弁であり,僧帽弁位での使用は緊急避難的であるため,今後の適応決定と経過観察に注意を要する.

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