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部分肺静脈還流異常症に対するdouble decker法による右上肺静脈再建の3D-CTによる評価
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科学分野
若林 貴志,渡辺 弘,高橋 昌,羽賀 学,登坂 有子,白石 修一,林 純一

【はじめに】右上肺静脈(ruPV)が上大静脈(SVC)に還流する部分肺静脈還流異常症(PAPVC)では,自己心膜パッチを用いてruPVからASDへ至るルートを作成する再建手技が一般的であるが,(1)限られた空間を分割するため,PVルートやSVCルートが圧迫・扁平化することがある,(2)大きな自己心膜パッチは時間経過とともに退縮してPVルートの狭窄を来すことがある,(3)患児の成長に応じた各ルートの成長・拡大が保証されない,という問題点がある.この点を考慮して,可及的に自己心房壁のみで再建するdouble decker法を施行し,術後評価を3D-CTにより行ったので報告する.【手術手技】症例は 7 歳と 8 歳のPAPVCの 2 例.体外循環を使用し,心停止下に右心耳からSVC方向に稜線を切開した.ASDの左右端より尾側に切開して心房中隔フラップを作成し,このフラップを上方にシフトさせSVCの右房開口部を覆うように縫着してruPV→SVC→LAルートを作成した.ruPVがSVCに流入する頭側でSVCを横切開して前壁の切開線を後壁に縫合.その後,切開を加えた右房壁をフラップとして右心耳切開部を頭側のSVC切開部に持ち上げるように縫い上げてSVC→RAルートを完成させた.【結果】術直後および術後 1 年での3D-CTでは,ruPVからLAにいたるルートは全体にやや膨らんでLAに還流していた.SVCはこのPVルートの腹側に狭窄なく認めた.自己心膜パッチでのruPV→LAリルーティング施行例のCTでは両ルートが扁平に圧迫されているのに比べてdouble decker法では圧迫所見が認められなかった.術後 1 年を経過した心臓カテーテル検査でもSVCルート,PVルートに狭窄は認めず,血流は滑らかであった.【結論】(1)PAPVCの修復において,自己心房壁のみで再建するdouble decker法は,SVCルートおよびPVルートの圧迫・狭窄がなく,良好な血流ルートが得られた.(2)3D-CTは各ルートの形と位置関係を明確に認識できるため,術後評価に有用である.

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