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感染性動脈瘤に対するハイブリッド治療
静岡県立こども病院心臓血管外科1),循環器科2)
城麻 衣子1),坂本 喜三郎1),藤本 欣史1),大崎 真樹1),廣瀬 圭一1),登坂 有子1),中田 朋宏1),井出 雄二郎1),中田 雅之1),新居 正基2),金 成海2)

【はじめに】感染性動脈瘤は通常仮性動脈瘤であり,瘤中枢側の同定が困難で無血野を得られ難く,出血で難渋することが多い.今回われわれは感染性動脈瘤に対して,術中に循環器医によるカテーテル手技を併用することにより,より安全な外科的治療を構築することができたので報告する.【症例】〈症例 1〉14歳,女児.ファロー四徴症根治術後.上気道感染を契機として左無名動脈に巨大感染性動脈瘤(約 6cm)を発症.これに対して,超低体温循環停止下に瘤切除および左無名動脈切断術を施行した.術中左上腕動脈よりバルーンカテーテルを挿入し,無名動脈をバルーンにて閉塞させた状態で開胸操作を行い,瘤にアプローチした.術後懸念された脳合併症もなく経過している.〈症例 2〉7 歳,女児.腹部外傷を契機とした腎動脈下巨大感染性大動脈瘤(約10cm)に対して,人工心肺補助下に瘤切除および端断閉鎖術を施行した.術中上行大動脈よりバルーンカテーテルを挿入し,エコーガイド下に位置を同定,腎動脈および上腸間膜動脈が閉塞されていないことを確認し,瘤中枢側の大動脈をバルーンにて閉塞させた状態で瘤にアプローチした.術後腎機能障害,腸管虚血,下肢虚血等の合併症なく経過している.【考察】2 例とも瘤が大きく,通常の外科的アプローチでは出血のリスクが高いことが予想された.今回循環器医によるカテーテル手技を併用することで,瘤へ流入する血流をコントロールすることができ,より安全に手術を行うことができた.ただ外科的操作とは異なり,バルーンでの血流遮断には一定の距離が必要であり,閉塞部位前後の枝による臓器灌流に注意を要する.このため術前に可能な限りエコー,CT,血管造影等で瘤前後の血管径,枝との距離を把握することが重要で,バルーンのサイズや形状の選択も重要となってくる.考慮すべき事項はあるものの,感染性動脈瘤に対する外科的治療へのカテーテル手技の併用は有用な治療戦略になり得ると考える.

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