II-B-15
ホモグラフト移植後石灰化に及ぼす若年齢の影響—免疫応答と高リン血症の関与
東京大学医学部附属病院心臓外科
山内治雄,本村 昇,村上 新,小野 稔,高本眞一

【背景】先天性心疾患の外科治療において同種組織(ホモグラフト)移植は有用だが,若年齢移植例では早期グラフト石灰化が機能不全を生じる.グラフト石灰化に与える若年齢の影響を免疫応答,リン代謝の点から検討した.【方法】ラット大動脈皮下移植モデルを用いた.(1)年齢の検討:Lewisによる同種同系移植を用いた.生後 3 週をjuvenile,生後10週をadultとし,ドナーにjuvenile,レシピエントにadult(A群)またはjuvenile(J群)を使用した.移植 7,14,28日後にグラフトを摘出した.移植前グラフトをPre群とした.(2)同種抗原性の検討:juvenileに標準食(Pi 0.9%)を与え使用した.Brown-NorwayからLewisへ14日間移植(Allo群)後グラフト摘出し,Lewis間移植(Syn群),Pre群と比較した.(3)リン抑制効果の検討:(2)のSyn群,Allo群に低リン食(Pi 0.2%)を与え(Syn-LP群,Allo-LP群),グラフト石灰化に及ぼすリン抑制効果を検討した.各群の血中リン濃度を測定し,グラフト石灰化をvon Kossa染色,カルシウム原子吸光度法で評価した.【結果】(1)年齢:J群でのみグラフト中膜が著明に石灰沈着した.J群は経時的にグラフト中カルシウム含有量が増加し,A群に比べ有意に高値となった(p < 0.05).全経過で血中リン濃度はJ群で高値を示した(p < 0.05).(2)同種抗原性:Allo群はSyn群と同様グラフト中膜に石灰化が生じた.Allo群はPre群に比べカルシウム量が有意に増加した(p < 0.0005)が,Syn群との間で有意差はなかった.(3)リン抑制効果:Allo-LP群,Syn-LP群では血中リン濃度が有意に低下し(p < 0.01),グラフト石灰化は出現せず,Allo群,Syn群に比べ有意にカルシウム量が抑制された(p < 0.005).【結語】若年齢レシピエントは移植後グラフト石灰化の促進に関わるが,同種抗原性に対する免疫応答ではなく,若年齢特有の高リン環境がグラフト石灰化促進に関与すると考えられる.

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