II-B-24
総肺静脈還流異常症の手術成績と遠隔予後—特に肺静脈閉塞性病変の予防に関して
社会保険中京病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
櫻井 一1),水谷真一1),加藤紀之1),森脇博夫1),杉浦純也1),波多野友紀1),松島正氣2),大橋直樹2),西川 浩2),久保田勤也2)

【目的】総肺静脈還流異常症(TAPVC)の手術成績は安定しほぼ満足いくものとなったが,肺静脈閉塞性病変(PVO)を合併するとその予後はいまだ不良である.当院で1999年以降採用しているI型,III型に対する,両端を数針の非吸収糸で結節縫合し,その間を吸収糸で連続縫合とする吻合法(現術式)を採用してからPVO発生が減少したと思われ,本術式の妥当性を中心に手術成績と遠隔予後を検討した.【方法】対象は,1994年 4 月から2007年12月までの13年 9 カ月間に当院にて 1 歳未満でTAPVC修復術を行った53例中,I 型,III型の36例とした.これらを手術時期により,現在の吻合術式とした1999年 6 月以後の 8 年半の後期20例とそれ以前の前期16例に分類し,死亡率,遠隔予後,PVO発生率などを検討した.前・後期群でそれぞれ,手術時月齢:1.1±2.0カ月,1.5±2.5カ月,体重:3.4±1.0kg,3.5±1.2kgで有意差はなく,観察期間:89±63カ月,44±32カ月,還流型は,I型:9 例,16例,III型:7 例,4 例であった.【結果】入院死亡は前期 4 例(25.0%),後期 2 例(10.0%),遠隔死亡はともになく,PVO発生は前期 3 例(18.8%),後期 1 例(5.0%)であった前期の死因は,PVO疑いの呼吸不全 1 例,PVO解除術後心不全 2 例,急性副腎不全疑い 1 例で,後期の死因は,PV閉塞 1 例,敗血症 1 例であった.PVOが発生した前期の 3 例は,1 例で非吸収糸のみによる連続および結節縫合を,2 例で全周吸収糸による連続縫合を行っていた.後期では,現術式を行っていた 1 例で,術中に左上PVが閉塞し肺出血で失ったが,術後のPVO発生例はなかった.【結語】左房‐共通肺静脈吻合に際しては,心停止前の立体的位置関係をくずさないよう細心の注意を払うとともに,現術式で術後PVO合併は減少し,手術成績は改善してきた.

閉じる