II-B-28
小児期感染性心内膜炎手術例の検討
弘前大学医学部胸部心臓血管外科1),小児科2)
鈴木保之1),大徳和之1),山内早苗1),皆川正仁1),福井康三1),福田幾夫1),高橋 徹2),米坂 勧2)

先天性心疾患の手術成績が向上し長期生存が得られるようになったが,その反面感染性心内膜炎(IE)の増加が懸念されている.また,成人期と違った誘因,合併症なども散見される.当院で経験した小児期感染性心内膜炎を後方視的に検討したので報告する.【対象と方法】1995年以降手術を行った感染性心内膜炎 5 例(年齢 1~18歳,男 2,女 3).起因菌,誘因,合併先天性心疾患,術前合併症,手術,予後について検討した.【結果】起因菌はStrept. vestibularis 1,Strept. equinus 1,Hemopilus influenzae 1,不明 2 例で,抗生剤投与により,全例で手術直前にCRPの陰性化を得られた.誘因について,先天性心疾患合併 2 例(VSD:1,ASD + PS + RVOTS + Chiari network:1),その他 3 例は先天性心疾患の合併はなかった.その他の誘因は歯科治療後 1 例,上気道感染後 1 例,細菌性髄膜炎後 3 例であった.術前の合併症はくも膜下出血,左脳梗塞各 1 例を認めた.くも膜下出血は脳室ドレナージ後脳動脈瘤クリッピング術を施行し約 1 週間後に心臓手術を行った.左脳梗塞は 1 カ月後のCTで左硬膜下血腫があり硬膜下血腫ドレナージ後心臓手術を行った.IEに対する手術は,肺動脈弁位 2 例は切除術,僧帽弁位 3 例はvegetation切除 + 形成術を行った.手術死亡はなく,全例退院したが,硬膜下血腫を合併した症例で術後 1 カ月血腫の増大を認めドレナージ + リザーバー留置術を行った.術後抗生剤を 4~9 週間使用しIEの再発は認めなかった.【考察】歯科治療後に発症した症例では予防的抗生剤を使用しておらずmoderate-risk categoryに入る心疾患を合併する場合,予防的抗生剤の使用が重要である.また先天性心疾患を合併していない場合でも髄膜炎を契機にIEを発症することがあり注意が必要である.硬膜下血腫は脳梗塞部位の縮小によるbridging veinの破碇が原因で,まれな合併症の一つと考えられた.

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