II-S7-3
航空機搬送は心疾患新生児に影響を与えるか—当院における症例の検討
北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科
春日 亜衣,高室 基樹,畠山 欣也,阿部 なお美,横澤 正人

【背景】北海道では胎児診断されていない心疾患新生児が都市部から離れた地域で出生した場合,航空機搬送を含めた遠距離搬送が必要になる.【目的】航空機搬送が心疾患児に与える影響について検討する.【方法】1997~2007年の11年間に都市部から離れた地域で出生し,当院へ航空機搬送された18例の心疾患新生児につき診療録をもとに後方視的に調査,検討した.【結果】18例の航空機搬送は生後 0~19(中央値 4)日に行われた.13例がヘリコプター,5 例が固定翼機で行われ固定翼機による搬送では中継地点で乗り継ぎを要した.航空機の飛行時間は65±28分だった.疾患の内訳は,先天性心疾患が15例(HLHS 3 例,AVSD 2 例,TOF 2 例,ほかPA/IVS,TGA,DORV,CoA complex,TAPVR,総動脈幹,AP window,Ebsteinが各 1 例),先天性心疾患以外の 3 例は未熟児PDA 1 例,心不全 2 例であった.航空機搬送直後のBGAはpH 7.33±0.05,pCO2 42.9±7.5,BE -3.8±3.55だった.先天性心疾患15例の予後は死亡が11例(73%)と不良であった.新生児期に手術が必要と考えられた12例中,6 例が搬送後に何らかの状態悪化を来した.10例が初回手術に到達し,初回手術は生後14.5±4.8日に施行された.手術後に 6 例が失われたが,このうち 5 例が搬送後に状態悪化を来した症例だった.航空機搬送に伴って発生した事象として中心静脈ルート閉塞からカテコラミンが止まり一時的に心機能悪化を生じた 1 例があった.【考察】当院に航空機搬送された症例の予後は極端に不良であった.航空機搬送される症例には新生児期に手術を要する重症先天性心疾患や合併症を抱えた症例が多いことも理由として挙げられるが,術前の状態安定に難渋した症例が多く含まれ,診断に至るまでの全身状態悪化,搬送による状態悪化が影響している可能性がある.胎児診断から母体搬送を行い,安定した状態での手術をめざすことでこれらの児の予後を改善し得るのではないかと思われた.

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