II-D-13 |
高肺血流型先天性心疾患を合併したDown症候群の術前検査および治療時期についての検討 |
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児科1),心臓血管外科2),麻酔蘇生科3)
美野陽一1),大月審一1),岡本吉生1),大野直幹1),近藤麻衣子1),森島恒雄1),佐野俊二2),笠原真悟2),吉積 功2),岩崎達雄3),戸田雄一郎3) |
【目的】Down症候群は正常児より早期に肺血管病変が進行するといわれており,高肺血流型先天性心疾患を合併した場合,術前心臓検査や手術時期は早期に行われるのが望ましい.当施設では2001年から術前検査および手術時期を早める方針としており,その妥当性について検討した.【対象・方法】1994~2007年に当施設で一期根治術に到達できかつ術前後に心臓検査を施行できた高肺血流型先天性心疾患のDown症候群の29例(CAVSD 21例,VSD 8 例).これらの症例について治療方針を変えた2001年以降の症例(A群)とそれ以前の症例(B群)の 2 群に分類,術後のmean PAPとPARに差があるかを後方視的に検討した.さらに手術時期の検討として,6 カ月以内と早期に手術を施行した症例(C群)とそれ以降に手術をした症例(D群)についても同様に検討した.【結果】A群:18例,検査時月齢4.1±2.6カ月,手術時月齢5.7±2.6カ月.B群:11例,検査時月齢5.6±2.9カ月,手術時月齢8.3±3.4カ月.2 群の術前の条件(体重,Qp/Qs)については有意差がなかった.術後mean PAP(mmHg)ではA群のほうが有意に低い値であった(A群18±4.3 vs B群25±12:p < 0.05).術後PAR(単位)でもA群のほうが有意に低い値であった(A群2.6±0.8 vs B群4.5±3.6:p < 0.05).また手術時期の検討として,6 カ月以内に手術したC群(13例)のほうがそれ以降に手術したD群(16例)より術後mean PAP,PARともに有意に低い値であった〔術後mean PAP(mmHg):C群19±4.8 vs D群25±12:p < 0.05,術後PAR(単位):C群2.9±1.0 vs D群4.9±3.6:p < 0.05〕.【考察】検討の結果から体重,Qp/Qsが同じでも術後のmeanPAP,PARには有意差があり高肺血流型先天性心疾患を合併したDown症候群では,肺血管病変を軽減させるためには早期検査,早期手術が重要であることが示唆された.特に手術時期に関しては 6 カ月以内の手術を目標とすることが重要ではないかと考えられた. |
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