II-D-16
高肺血流型先天性心疾患を合併したDown症候群における残存肺高血圧の検討—症例を選択した早期手術と在宅酸素療法の有用性
九州厚生年金病院小児科1),心臓血管外科2)
山村健一郎1),熊本 崇1),熊本愛子1),森鼻栄治1),岸本小百合1),渡辺まみ江1),大野拓郎1),落合由恵2),井本 浩2),瀬瀬 顯2),城尾邦隆1)

【背景】高肺血流型心疾患を伴うDown症候群では早期に肺血管病変が進行する.当院では高度肺高血圧(PH)の症例は 6 カ月以内の根治術を原則とし,中等度に近いPHの残存例には酸素負荷試験を参考にHOTを用いてきた.【対象】1996年以降に当院で経験した高肺血流型心疾患を伴うDown症候群83例(VSD 38,AVSD 21,ASD 16,PDA 6,pink TOF 2).二期根治は 5 例(PDA結紮 3,PAB 2).肺生検は 6 例.【方法】術前後のカテーテル検査,酸素負荷(41例)の結果と残存PHについて検討した.【結果】(1)生存81例のうち,PHが残存しHOTを要した群(H群:19例)と非HOT群(N群:62例)の比較結果を示す.手術時月齢中央値(H)4.6(N)6.6とH群では手術が早期だった.Qp/Qs(H)2.56±0.97(N)2.90±1.55とH群で低かった.術前PAp(H)61±21(N)52±18mmHg;術前Rp(H)4.29±3.52(N)3.05±1.92;術後PAp(H)41±13(N)30±7mmHg;術後Rp(H)4.81±2.53(N)2.91±1.16とH群では術前後ともPAp,Rpが有意に高かった.しかし平均推定右室圧は術後 1カ月→1 年→最終外来時(H/N)38/31→33/30→31/29mmHgと経時的に両群間の差が減少した.(2)最終推定右室圧30mmHg以上の遠隔期PH残存群(P群:36例)と非残存群(NP群:55例)の比較では,術後Rp(P)3.15±1.32(NP)3.40±1.92と差はないが,酸素負荷時Rp(P)2.89±1.39(NP)2.20±0.60とNP群で有意に低下した.(3)全体の最終推定右室圧は29±5mmHg(max 43mmHg)で中等度以上のPHなし.HOTも 2 例を除き 2~19カ月で中止できた.(4)死亡は 2 例.PDA術後のSIDS 1 例.月齢10に未手術で死亡したASD,高度PHの 1 例は薬物治療抵抗性で肺生検ではPPHを合併していた.【結語】高度PHに加え乳児早期からRpも上昇しQp/Qsが低めで経過する例はPHが残存しやすく,症例を選んだ早期手術が必要である.遠隔期PHの指標となる酸素負荷試験を参考にHOTを用いることで残存PHも改善し,最終的に中等度以上のPHが問題となる例はなかった.本治療方針は妥当と考えた.

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