II-D-17
Down症候群に合併した肺高血圧を伴う心室中隔欠損症の臨床的検討
山形大学医学部小児科1),第二外科2),山形県立日本海病院小児科3)
鈴木 浩1),仁木敬夫1),小田切徹州1),吉村幸浩2),前川慶之2),田邉さおり3)

【はじめに】Down症候群に合併する心室中隔欠損は肺高血圧を伴うことが多く,肺血管病変が進行しやすいといわれている.山形大学小児科で経験した例について臨床的検討を行った.【対象・方法】1988年から2008年 1 月までの20年間に山形大学小児科で経験したDown症候群に合併した肺高血圧を伴う心室中隔欠損症35例(男14例,女21例)を対象とした.診療録をもとに後方視的に臨床経過等を検討した.【結果】合併奇形は19例に動脈管開存,8 例に心房中隔欠損,2 例に左上大静脈遺残を認めた.5 カ月で自然閉鎖した 1 例,Eisenmenger症候群の 1 例と肺出血で死亡した 1 例を除く32例に手術を施行した.心内修復術の手術時期は1998年以降の最近10年間の13例中では生後 2~3 カ月での手術例が 7 例と過半数を占めたのに対し,それ以前の19例中では最も早かったのが生後 5 カ月の 2 例で,10例は 1 歳を越えていた.1992~1994年に 3 例は生後 5~6 カ月で呼吸不全に陥り,1 例は心内修復術を,1 例は姑息術を行いのちに心内修復術を施行した.もう 1 例は肺出血で死亡した.心内修復術前の心臓カテーテル検査を施行した24例中20例ではPp/Ps 0.8以上の高度の肺高血圧を呈した.肺血管抵抗(Rp)は 5 単位・m2以上の例が 5 例で,生後 3 カ月が 1 例,5 カ月が 2 例,7 カ月が 1 例,2 歳 2 カ月が 1 例であった.手術死亡,術後のPH crisisはなかったが,1 例を白血病で失った.術後,在宅酸素療法を 3 人に行い,5 例にberaprostを投与し,経過は良好である.【結論】Down症候群に合併する心室中隔欠損症は生後 5~6 カ月で高度の肺血管病変を呈したり,呼吸不全に陥る例があることから,乳児期早期の心内修復術が望ましい.

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