II-D-18
当院で経験した肺高血圧を伴ったDown症候群の臨床像
東京都立清瀬小児病院循環器科
大木寛生,永沼 卓,知念詩乃,松岡 恵,河野一樹,葭葉茂樹,三浦 大,佐藤正昭

【背景】Down症候群(DS)は先天性心疾患(CHD)に関連する奇形症候群のなかで最多で約半数にCHDを伴う.肺血管閉塞性病変(PVOD)の進行が早く肺高血圧(PH)を合併しやすい.上気道狭窄・低換気・無呼吸に関連するPHもある.【方法】心臓カテーテル検査・治療および手術の対象となったDS 250例〔年齢:中央値11.9歳,0.6歳~40.4歳,性別:男113例,女137例,主病名:心室中隔欠損(VSD)127例,完全型房室中隔欠損(AVSD)51例,動脈管開存(PDA)29例,心房中隔欠損(ASD)12例,部分型AVSD 4 例,不均衡型AVSD 1 例,ファロー四徴(TF)14例,AVSD + TF 7 例,肺動脈閉鎖 + VSD + PDA 2 例,慢性肺疾患(CLD)3 例〕のうち術前PH(平均肺動脈圧25mmHg以上)を認めた160例を対象に,CHDの種類,心カテ所見(原則,手術前後,気管内挿管・全身麻酔下,吸入酸素濃度0.21,正常二酸化炭素分圧,要すれば酸素負荷試験),手術時期,術後残存PH,PH関連事象(PH発作・治療・肺生検所見)を後方視的検討.【結果】VSD 90例(71%),完全型AVSD 51例(100%),PDA 11例(38%),ASD 5 例(42%),CLD 3 例(100%)に術前PHを認めた.術後残存PHおよびPH関連事象の有無で 2 群(無群118例,有群42例)に分類し術前肺血管抵抗値(PVR)と初回手術時期(肺動脈絞扼術を含む)について比較検討.術前PVR(U・m2):VSD 2.4±1.1 / 5.8±6.4(p = 0.03),完全型AVSD 2.0±0.75 / 4.1±1.7(p < 0.001),PDA 1.8±0.48 / 5.5±2.1(p = 0.041),ASD 2.5±1.3 / 2.7±1.1(p = 0.874).初回手術時期(月齢):VSD 9.0±6.8 / 32.3±47.0(p = 0.045),完全型AVSD 4.8±1.6 / 12.3±7.9(p = 0.001),PDA 13.1±11.9 / 18.3±11.6(p = 0.552),ASD 9.4±2.6 / 28.7±5.7(p = 0.004).【考案】DSでは肺血流増加型短絡心疾患に高率にPHを合併し,術前PVR高値(約 4U・m2以上)により術後残存PHおよびPH関連事象を予測できる可能性がある.PVODの進行が早いため可及的早期(約 6 カ月未満)に手術を行うのが好ましいと考えられた.

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