II-E-3
当院における大動脈異形成弁症例の臨床的検討—大動脈二尖弁症例を中心に
大垣市民病院小児循環器科1),胸部外科2)
西原栄起1),倉石建治1),田内宣生1),小坂井基史2),杉浦 友2),石本直良2),石川 寛2),横山幸房2),玉木修治2),太田宇哉1)

【はじめに】先天的大動脈弁形態異常として単尖弁,二尖弁,四尖弁があり,そのうち二尖弁は頻度が高く,無症状の例から将来大動脈弁機能障害や,大動脈拡張を呈す例までさまざまな経過をたどる.【目的】当科で経過観察中の大動脈異形成弁例の臨床像を明らかにすること.【対象と方法】大動脈異形成弁47例(単尖弁 1 例,二尖弁42例,三尖弁 3 例,四尖弁 1 例)を対象に,大動脈弁狭窄(AS),大動脈弁閉鎖不全(AR)の有無と経時的変化,合併症の有無を検討した.また,二尖弁に関しては心エコーで形態を前後型,左右型に分類し比較検討した.【結果】男女比は30:17.初診時年齢:平均3.9±4.3歳(生後 1 日~14歳:中央値2.4歳).経過観察期間:平均9.4±5.7年(4 カ月~19.7年:中央値7.6年).合併心奇形は,CoA 12例,VSD 4 例,MS 3 例,PDA 2 例,PSv 2 例,IAA 1 例.単尖弁例はcritical ASでPTAVを行いAS解除されたが重度ARが残存した.三尖弁例は右冠尖低形成 2 例,左冠尖低形成 1 例で,AS,ARは軽症のまま経過していた.四尖弁例は,10歳時に胸部不快感で受診後急性心筋梗塞を発症.大動脈弁置換とCABGが施行された.二尖弁例は,弁の形態は左右型21例,前後型20例であった.ASは24例あり,その内訳は軽症のまま不変17例,中等症以上へ増悪 4 例,critical AS 3 例であった.増悪例のうち 2 例はそれぞれ15,16歳時に大動脈弁形成術施行.1 例は14歳時に大動脈解離発症.1 例は19歳時突然死した.ARは30例ありその内訳は,ARの中途出現13例,軽症のまま不変 9 例,中等症以上で不変 2 例,中等症以上へ増悪 6 例であった.増悪例のうち 3 例はPTAV後であった.弁の形態とAS,ARとの関連はなかった.【まとめ】二尖弁例はcritical ASを除けば小児期にASが増悪し治療が必要になることは少ないとされ,自験例でも青年期になって増悪がみられていた.ASに比べARは進行例が多く,注意深く経過観察する必要がある.

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