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II-E-11 |
新生児期に診断され,合併する多発性心室中隔欠損に対する開心術を施行した心筋緻密化障害の 2 例 |
兵庫県立こども病院循環器科
城戸佐知子,田中敏克,寺野和宏,藤田秀樹,齋木宏文 |
【背景】心筋緻密化障害に先天性心疾患を伴う場合の開心術の報告例は少なく,そのタイミング,術前後の管理などに大きな問題があると思われる.今回われわれは,新生児期に著明な心機能低下やチアノーゼで発症,乳児期に心室中隔欠損に対する手術を施行後比較的良好に経過し,それぞれ 5 年および 1 年の経過観察を行っている 2 症例を経験したので,報告する.【症例 1】家族歴:父方祖父および伯父が拡張型心筋症.胎児期に徐脈を指摘.出生後チアノーゼを認め,心エコーで多発性心室中隔欠損(膜様部 8mm,筋性部に 6~7 カ所),心房中隔欠損,下大静脈欠損,半奇静脈結合と左室心尖部心筋のスポンジ様変化,および等圧以上の肺高血圧を認めた.生後 5 カ月時に肺動脈絞扼術,11カ月時に心室中隔欠損の閉鎖を行った.術後 1 年半で心機能軽度低下,BNP = 40~90pg/mlと軽度高値を認めたためACE阻害剤を開始.術後 4 年で残存心室中隔欠損の血流は消失したが,推定肺動脈圧40mmHg程度が持続している.【症例 2】家族歴:父と姉が心筋緻密化障害.生後 1 カ月で呼吸不全,全身チアノーゼを呈し救急搬送.心エコー上心室中隔欠損は膜様部と筋性部に認め両方向シャント,両心室心尖部の心筋は粗で,著明な心機能低下を認めた.カテコラミン,利尿剤,塩酸オルプリノンを投与,約 1 カ月の経過で急性心不全症状は徐々に改善するが,FS = 0.25,BNP = 271pg/ml,高肺血流および肺高血圧が持続し,生後 4 カ月時に心室中隔欠損閉鎖術を施行.その後も心エコー上FS = 0.25前後と心機能の改善は十分でないが,BNP = 11まで低下している.【考案】心筋緻密化障害の先天性心疾患合併例において,合併する心疾患の治療が状態を安定させる可能性があり,心不全の管理を積極的に行ったうえで,心機能が安定した時期を選べば比較的安全に開心術を行うことができるとも思われた.しかし,心機能低下,肺高血圧は術後も残りやすく,長期の予後についてはまだ不明である. |
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