II-E-15
小児における心筋トロポニンT
土浦協同病院小児科
渡部誠一,細川 奨

【目的】小児における心筋トロポニンT(以下cTnT)の心筋疾患特異性,臨床的有用性を検討する.【方法】対象は188検体,定性検査136検体,定量検査75検体,定性・定量同時測定23検体;患者年齢は 0~16歳,平均5.3歳,男110,女78,同一患者で複数回測定例も含む:疾患分類は圧負荷 3,容量負荷17,心筋疾患17,不整脈31,川崎病40,胸痛18,脳症 3,筋疾患 3,その他の神経疾患(痙攣を含む)19,アレルギー 2,ショック 4,呼吸障害 3,敗血症 2,肺炎 8,その他の感染症15,その他 3.cTnT定性検査(迅速診断)はモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ法に基づく免疫クロマトグラフィー法(三和化学,トロップTセンシティブ),定量検査は電気化学発光免疫測定法(SRL,心筋トロポニンT)で行った.定量検査は0.02ng/ml以上を陽性とした.心疾患を疑われた症例は心電図,心エコー検査等を追加した.【結果】陽性は定性検査34,定量検査21.陽性例は圧負荷 2/3,容量負荷 9/17,心筋疾患12/17,不整脈10/31,胸痛 1/18,脳症 3/3,筋疾患 2/3,ショック 4/4,呼吸障害 1/3,敗血症 1/2,肺炎 4/8.心筋疾患では急性心筋炎,慢性心筋炎,肥大型心筋症急性増悪でcTnTが陽性化した.定性検査・定量検査同時施行例では定量値0.03ng/ml以上の 7 件は一致し,定量0.02ng/mlの 2 件は定性陰性であった.同一患者の経時的変化では初回陰性でも 6~12時間の再検で陽性化する例があった.【考察】cTnTは心筋壊死マーカーとして特異性が高いが,小児疾患では脳症・ショック・敗血症・呼吸障害・肺炎などでも陽性化することがある,したがって臨床的判断は心電図・心エコー等を追加して総合的に行うことが必要である,心筋炎・肥大型心筋症急性増悪で陽性化する,定量値は0.03ng/ml以上を陽性とすべき,初回陰性でも 6~12時間後の再検を要することがあるなどの知見を得た.

閉じる