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先天性心疾患患者の急性腎不全発症例の臨床像
国立循環器病センター小児循環器診療部
宗村 純平,大内 秀雄,宮崎 文,山田 修

【背景,目的】チアノーゼ性腎不全は広く知られているが,チアノーゼの改善した心疾患術後症例で腎不全の有無は不明である.われわれは経過中に急性腎不全を生じた先天性心疾患(CHD)8 例について後方視的に検討した.【対象,方法】急性腎不全を生じたCHD 8 症例(1~35歳:平均20歳,診断:修正大血管転位 2 例,三尖弁閉鎖 3 例,右室型単心室 1 例,両大血管右室起始 1 例,左室低形成 1 例)で,最終術式はFontan術 5 例,姑息術 3 例であった.急性腎不全は血清クレアチニン値(Cr:mg/ml)の急速な上昇〔基礎に腎機能低下がない例は,Crが2.0以上,基礎に腎機能低下がある例はCrが50%以上,あるいはCrが連日0.5以上かつ尿素窒素(BUN:mg/dl)が10以上〕を示し入院加療を要したものとした.【結果】入院時NYHAクラスは 1~4 度(平均2.1,以下括弧内は平均),BMIは0.39~1.95m2(1.31)で,内服状況はdigoxin 3 例,β遮断薬 7 例,ACEI/ARB 7/4 例,利尿薬 8 例,抗不整脈薬が 2 例で,血液検査ではCr:1.1~5.8(2.8),BUN:43~133(66),電解質(mEq/l)はNa:121~141(131),K:4.1~6.9(5.2)であった.治癒後の24時間Crクリアランス(Ccr:ml/分/m2)は9.3~91(38.2)であった.血行動態では中心静脈圧,体心室の容積,駆出率,動脈酸素飽和度はおのおの 4~17mmHg(11),83~537%(194),29~56%(47)および69~94%(85)で,BNPは18~292pg/ml(193)であった.腎レノグラムシンチは 4 例に施行.機能相,排泄相とも遅延例は 1 例,排泄相のみ遅延例は 3 例であった.腎ドプラエコーは 6 例に施行し,すべて両腎機能低下パターンであった.初回腎不全時の治療法は血液透析を 1 例,内服薬(ARB,ACE I)中止を 5 例,強心薬投与を 3 例に行い,いずれも急性期では有効で治療期間は 2~26日(8)であったが遠隔期では再入院を 1 例,死亡を 2 例に認めた.【結論】CHD例でも心不全を有する患者の管理,治療では腎機能不全の合併を考慮することが重要である.

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