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リアルタイム心エコー遠隔診断の試み
静岡県立こども病院循環器科1),富士宮市立病院小児科2),順天堂大学医学部附属静岡病院新生児科3)
満下 紀恵1),小野 安生1),新居 正基1),北村 則子1),早田 航1),増本 健一1),古田 千左子1),金 成海1),田中 靖彦1),深澤 ちえみ2),梅崎 光3)

【背景】厚労省班会議の「新生児重症心疾患に対する予後向上のためのリアルタイム心エコー動画像による遠隔診断と新生児心疾患救急診療システム確立に関する臨床研究」をはじめとして,多施設で心エコー遠隔診断の試みが始まっている.静岡県では小児循環器専門施設は西部と中部にあり,東部や伊豆地方の先天性心疾患新生児は長距離搬送を余儀なくされている.【目的】当院での心エコー遠隔診断の現状と問題点を知る.【方法と対象】当院と東部伊豆地区の 2 病院間にインターネット回線をひき,動画送信にはアップルコンピュータ提供のiChat AVを使用.使用エコー機器はALOKASSD2200とALOKAprosoundSSD4000.心疾患疑い新生児の心エコー動画を直接機器よりリアルタイムで送り当科医師と一緒に診断治療方針を決定.【結果】3 症例 4 回の遠隔診断を施行〔症例 1:心室中隔欠損 2 回,症例 2 純型肺動脈閉鎖 1 回,症例 3 肺動脈弁狭窄(vPS)1 回〕.問題となるような画像の劣化なくリアルタイムで動画受信可能.症例 1:胎児診断例.0dと10dに施行.転院なく23d退院.症例 2:1d肺血流動脈管依存性心疾患の疑いで遠隔診断.診断中に徐脈で中断も三尖弁閉鎖の診断で同日当院搬送.症例 3:0d心雑音とPS疑いで遠隔診断.critical PSの診断で当院搬送.vPSで日齢 9 に退院.【考察とまとめ】今回の情報通信システムはリアルタイム遠隔診断に十分耐え得るものと思われる.遠隔診断を利用することにより重症心疾患児だけではなく,不必要な生後早期の搬送を減らすことも可能であろう.今回は,実際の心エコー施行医師が心エコーに慣れており画像描出が的確であったことも遠隔診断成功の一助であり,遠隔診断が今後発展していくためには,システムの整備とともに幅広く小児科医,新生児科医への心エコー検査技術の普及も平行して行われるべきだろう.

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