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フォンタン型手術後患者のaugmentation index(AI)の評価
京都府立医科大学大学院医学研究科小児循環器・腎臓病学
佐藤 恒,小林 奈歩,河井 容子,加藤 竜一,問山 健太郎,藤井 麻衣子,小澤 誠一郎,白石 公,糸井 利幸,浜岡 建城

Fontan型術後では心室に対する後負荷増大が報告されているが,簡便に後負荷を評価する方法は確立されていない.近年動脈硬化の指標として,橈骨動脈波形から得られるaugmentation index(AI)が注目されている.【目的】今回われわれは,Fontan型術後心室に対する後負荷の評価として,AI測定の有用性について検討した.【方法】測定対象はFontan型手術を施行された患者10例(6~18歳)とし,対照は川崎病患者 9 例(6~22歳)とした.AIの測定には,オムロン社製HEM-9000AIを使用した.右あるいは左橈骨動脈波形から,四次元微分法によって算出された収縮前期および収縮後期圧を用いて,(1)AI値(収縮前期血圧P1/収縮後期血圧P2),(2)P1-P2時間を測定した.【結果】AI値については,Fontan群(84.66±12.25%)は,対照群(65.64±12.79%)と比較して有意に高値だった(p = 0.00414).P1-P2時間については,Fontan群(171.6±51.26msec)と対照群(177.9±45.56msec)では,有意な差を認めなかった.【考察】動脈硬化例ではP1-P2時間が短縮するが,2 群間でP1-P2時間に有意な差を認めなかったことから,動脈硬化がFontan群のAI高値の原因ではないと考えられた.AI値の変化は,Fontan circulation独特の血行動態(1 つの心室に対して体循環および肺循環が並列構造)に起因する,後負荷増大を示していると推察された.Fontan型手術後では成人の動脈硬化例と異なり,P1-P2時間が短縮しないことから,後負荷が相乗される可能性が示唆された.以上から,Fontan型手術患者に対する血管拡張剤による治療の有効性が推測され,橈骨動脈波形から得られるAIはFontan型術後患者の血行動態評価,および治療効果に有用であると考えられた.

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