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先天性心疾患の遠隔医療
東京大学医学部心臓外科
竹内 功,村上 新,北堀 和男

先天性心疾患患者の治療成績向上により先天性心疾患患者の生命予後は改善された.その結果,成人先天性心疾患患者の遺残病変,新規病変など新たな治療領域が発生し適切な対応が望まれる.その医療の質の担保と医療資源の効率的な利用のため,施設統合が検討されているが,重点化施設と周辺医療機関を結ぶ質の高い,動きの早いネットワークが必要となる.日本先天性心臓血管外科手術データベース機構(JCCVSD)は医療の安全化と国民の健康増進を目的に立ち上げられ2008年 1 月より試験的なデータ入力を開始し,2008年中に本邦独自のデータベース入力がweb-baseで開始される予定である.しかしながら,2007年にアメリカ胸部外科学会から,45,000件のprocedureの解析でも,150種類以上に及ぶ多様なprocedureに起因してone procedure当たりのNが少なく,統計学的なpowerが低いことが報告された.この報告を受けてJCCVSDではフォローアップ・データベースの構築の可能性が検討された.先天性心疾患患者が施設を変えて医療を受ける場合,国内のネットワーク参加施設を受診した場合,過去の手術歴・入院歴・治療歴などの情報にアクセス可能であれば,より質の高い医療を提供することが可能となると考えた.しかしこのような付加価値を与えるためには,(A)個人情報保護(その特性として個人が特定し得るデータベースとなる),(B)情報管理(アクセス権),(C)情報管理維持やネットワーク維持のための財源,(D)外科医や施設の情報開示に関する問題などが挙げられる.また,入力者の負担増と日常業務の圧迫も懸念され,入力者を雇用した場合の人件費の捻出と情報管理方法なども解決すべき問題として挙げられる.本学会総会でこのような問題点を整理し,問題解決に向けた建設的な討論を期待したい.

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