P-132
成人先天性心疾患妊婦の心臓組織ドプラによる心機能の評価
東京女子医科大学循環器小児科1),産婦人科2)
清水 美妃子1),松田 義雄2),篠原 徳子1),中西 敏雄1)

【背景】近年成人期に達する先天性心疾患(ACHD)患者が増えたことに伴い,妊娠,出産する人も増えてきた.NYHA I~II°でも,妊娠に伴い心不全になることも珍しくない.また,心不全があり,妊娠することが薦められない患者が妊娠し,重篤な状況を招く場合もある.妊娠・分娩の可否,管理の指標となる心機能の指標の確立が望まれる.妊婦の場合,loading conditionが変化するため,駆出率は心機能の指標として理想的とはいえない.さらに,ACHDの場合,2 心室と単心室,主心室が右室と左室の場合が存在し,心機能の評価が難しい.tissue Doppler echocardiography(TDE)は,収縮能・拡張能の評価を両心室で比較的簡便に行うことができ,得られる指標は,比較的load independentといわれている.【目的】妊娠経過中の心エコー指標の変化について検討する.【方法】ACHDの妊婦(n = 7)で,心エコー検査,TDEを用いて経時的心機能評価を行った.検査は各妊娠前期,中期,後期に行った.【結果】主心室が左室 5 名,右室 2 名を検査した.収縮能を表す指標(駆出率/isovolumic acceleration/systolic wall velocity)はいずれも,妊娠経過中有意な変化はなかった.Tei indexは,前期0.16±0.14,中期0.30±0.15,後期0.37±0.14と有意(p = 0.04)に上昇した.E/Eaは左室で8.4±2.7,8.0±2.1,7.6±0.9,右室で10.9±4.2,9.7±3.0,11.1±4.3と,経過中有意な変化はなかったが,全体としては高値を示した.【結論】NYHA I~II°のACHD妊婦は,正常妊婦同様収縮能は保たれていた.しかし,左室Tei indexは妊娠の進行に伴い上昇した.ACHD妊婦において心室拡張能が低下している可能性がある.

閉じる