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気道狭窄の呼吸生理学的評価の指標の導入と臨床応用例の提示
埼玉県立小児医療センター循環器科
菱谷 隆,河内 貞貴,菅本 健司,星野 健司,小川 潔

先天性心疾患に合併する胸腔内気道狭窄の評価方法として呼吸生理学的手法を用いた.【方法】狭窄(古典的にvariable typeかfixed typeか)の定量化に 2 つの指標:V50(50%呼気位での呼気流速と最大呼気流速との比)とτ(s)(呼吸器系回路の時定数,1 回換気量/最大呼気流速で近似)を導入した.対象は気道狭窄を合併した先天性心疾患患者(S)群 6 例(年齢:9.0±8.2カ月,体重:5.9±2.5kg)と,気道狭窄のない心疾患患者(C)群10例(年齢:9.6±10カ月,体重:6.1±2.4kg).挿管下で呼吸モニターのflow-volume曲線を解析した.一般的指標の気道抵抗(Raw)(cmH2O/l/s)も測定した.解析 1:1 回換気量(5~15ml/kg)を変化させた時のRaw,V50,τの値を求め換気量の影響を検討.解析 2:1 回換気量を10ml/kgに固定し,Raw,および10個のflow-volume曲線から求めたV50,τの平均値を比較.またτ-V50の二次元平面に表示した.臨床応用例:各指標にて血管輪,肺動脈欠損,気道ステント挿入例および広汎な気道狭窄合併したファロー四徴の術前後の気道評価を行った.【成績】解析 1:換気量によりV50(不定),τ(linearに増加),Raw(低下)は変化した.解析 2:(1)Rawの自然対数をとり体重で徐した値(cmH2O/l/s/kg):S:0.96±0.34 vs C:0.85±0.51(p = 0.311),(2)V50は体重に依存しない.S:0.59±0.13(range 0.36~0.73)vs C:0.76±0.04(range 0.69~0.79)(p = 0.01),(3)τは体重に伴いlinearの増加.体重で除した値(s/kg):S:0.101±0.029(range 0.065~0.14)vs 0.066±0.023(range 0.031~0.1)(p = 0.02),(4)τ-V50平面上の直線τ= 0.56とV50 = 0.69で狭窄例と正常例を分けることができた.臨床応用例:τ-V50平面に描くことで術前後の気道狭窄の改善程度を判断できた.【結論】RawよりτおよびV50が気道狭窄の指標として有用と思われた.二次元平面表示で気道狭窄例の鑑別と手術による改善度の評価が可能であった.

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