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修正大血管転位症(c-TGA)におけるTRに対する弁形成術の経験
大垣市民病院胸部外科
玉木 修治,横山 幸房,石川 寛,石本 直良,杉浦 友,小坂 井 基史

【はじめに】c-TGAにおけるTRに対しては人工弁置換術が施行されてきたが心機能の温存や人工弁由来の問題を考慮すれば弁形成術が望ましい.われわれはc-TGAのTRに対し弁形成術を施行したので報告する.【症例】25歳,女性.小児期にc-TGAと診断されたが無症状で経過してきた.24歳時より労作時息切れが出現,UCGで体心室(RV)の拡大と重症のTRを認めたため手術適応とされた.胸部X線でCTRは46%でmesocardia,UCGでRVDdは61mm,RVDsは42mm,EFは58%と計測された.【手術】胸骨正中切開,右側左房切開でT弁に到達した.以後弁尖の名称は正常心における名称を使用した.前尖,中隔尖に肥厚を認め,前尖に逸脱を認めたが腱索断裂など弁下組織に異常はなかった.後尖にはcleftを認め両交連部は拡大していた.弁尖には前尖,中隔尖の肥厚部位にedge to edge repairを施行,後尖のcleftを閉鎖し拡大した交連部を縫縮した.弁輪形成には僧帽弁用26mm Physio ringを用いた.心停止下での形成の良否判定は困難であったので拍動下にTEEで判定した.TRはtrivialであった.【考察】c-TGAのTRに対する弁形成術を困難にしている点は,T弁を自然な位置で観察するための視野の確保が難しいこと,弁下組織が僧帽弁に比べて脆弱で腱索再建など通常僧帽弁形成に用いる手技を適応しにくいこと,水により心室を拡張させて弁尖接合を判定する方法では中隔に連続する乳頭筋の変形を来すことから判定が困難であることなどである.これらを考慮してあらかじめ縫着した弁輪形成用の糸を牽引することで弁輪形成後の状態を模倣し,弁下組織に頼らない形成を選択する.そして形成の良否は拍動下にTEEで判定することが重要である.ただedge to edge repairは適応できる範囲に制限があるので,弁病変が複雑かつ広範になる前に手術適応とすることが重要であろう.【まとめ】若年女性,c-TGAのTRに対して弁形成術を施行し良好な結果を得たので手術手技などについて報告した.

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