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成人チアノーゼ性先天性心疾患患者の脳神経学的合併症
KKR名城病院小児循環器科
小島 奈美子,小川 貴久

【背景】さきの第43回日本小児循環器学会(2007年,東京)において,成人先天性心疾患患者には心不全,不整脈,喀血,脳膿瘍,腎障害,卵巣出血,側弯,イレウスなどさまざまな全身合併症がみられることを報告した.しかし一般地域医療の現場においては,特に成人チアノーゼ性先天性心疾患(以下ACCHD)患者の意識障害などにつき知識の共有ができていないことも事実である.【目的】ACCHD患者における脳神経学的合併症の頻度および種類につき検討する.【対象】当院小児循環器科でフォロー中のACCHD 27名.男性13名,女性14名.年齢20~44歳.疾患内訳アイゼンメンジャー11名,SV 10名,ccTGA 2 名,AVSD 1 名,TA 1 名,HLHS 1 名,TOF 1 名.【方法】入院を要する神経学的合併症につき,後方視的に検討する.【結果】ACCHD患者の22%に入院を要する脳神経学的合併症を認めた.脳膿瘍 3 名,一過性脳虚血 1 名,脳梗塞 1 名,てんかん 1 名.症状出現時,6 名中 4 名が自主的に小児循環器外来を受診,1 名が周術期管理中,1 名が地域救急病院に搬送されたのち小児循環器科へ紹介され診断に至った.脳神経学的予後は脳性麻痺 1 名,半盲 1 名,抗てんかん薬内服 1 名,治癒 3 名であった.【考察】ACCHD患者の脳神経系への障害としては,急激な血流障害による意識消失や突然死のほかに,2 次的多血症と血液粘調度上昇による慢性的な脳全体の微小循環障害や,右→左シャントによる膿瘍形成が特徴的である.また,心疾患の治療に使用されている抗凝固薬や抗血小板薬が,脳神経系の出血性病変の助長や脳浮腫の増悪を来すことに留意する必要がある.そのほかにも,各種臓器さまざまな合併症の可能性があり,複数科による包括的チーム医療体制の確立が望まれる.小児循環器科医はその中心的役割を果たすべく,地域医療への啓蒙が必要であると思われる.

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