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当科における成人入院症例の社会的および臨床的な特徴に関する検討
国立成育医療センター循環器科
林 泰佑,江竜 喜彦,進藤 考洋,金 基成,金子 正英,磯田 貴義

【目的】当院では,循環器疾患を有するキャリーオーバー患者を小児循環器科医がフォローアップしており,入院を要する場合も小児循環器科医が担当している.当科の成人入院症例を対象に,その社会的および医学的な特徴や問題点を検討した.【方法】2006年 1 月~2008年 1 月に,当科に入院した18歳以上の症例を対象に,診療録を後方視的に検索.生活状況を(ア)無職,(イ)有職および学生の 2 群に分類.入院目的は(1)心不全管理,(2)不整脈治療,(3)心臓カテーテル検査等の検査入院,(4)感染症など非循環器疾患,の 4 群に分類.基礎疾患は(A)GlennまたはFontan術後,(B)2 心室形態で心内修復術後,(C)大血管転位で心房間血流転換術後,(D)根治術が不可能,(E)先天性心奇形でないもの,の 5 群に分類.【結果】48人の患者が延べ79回の入院をしていた.平均27.3歳(18.1~37.9歳),死亡例が 3 例あった.有職者および学生は31人(65%)を占めた.無職群では,NYHA III度以上,SpO2 90%未満,在宅酸素療法,β遮断薬内服の比率が有意に多かった.入院回数は無職群で有意に多かったが,入院日数には有意差はなかった.不整脈での入院は13人,延べ26回(33%)で,1 例を除き心房性の頻拍発作であった.心臓手術既往のある者は10人で,最終手術から18.9±7.7年経過していた.検討対象期間に不整脈の初回発作を起こした症例は 1 例に過ぎず,多くの症例で治療を要する不整脈発作の既往があった.非循環器疾患での入院は23回(29%)を占め,感染性心内膜炎が 4 例,ほかにFontan循環の患者や根治術が不可能な患者の肺炎等による入院が大半を占めていた.一過性脳虚血を疑われた症例も 2 例あり,他院に紹介された.【考察】入院症例の65%を有職者が占め,入院にあたっては患者の社会生活に配慮した治療計画が必要である.複雑心奇形を有する患者がcommon diseaseで入院することも多く,また小児病院では対応が困難な症例もあり,成人内科との連携が課題である.

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