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先天性心疾患における感染性心内膜炎の臨床像—最近の傾向
金沢大学大学院医学系研究科小児科1),心肺・総合外科2)
斉藤 剛克1),中山 祐子1),太田 邦雄1),小泉 晶一1),新井 禎彦2),渡邊 剛2)

【背景】2004年に本邦における先天性心疾患に関係した感染性心内膜炎の予防・治療に関する全国調査結果が発表され,1997年から 5 年間の実態が明らかとなった.近年の感染性心内膜炎予防法の確立にもかかわらず罹病率に減少傾向がないことが示された.【目的】その後の,当院での先天性心疾患における感染性心内膜炎の臨床像を明らかにし,感染性心内膜炎の予防について今後特に重点を置くべきポイントにについて考察する.【対象】1996年 1 月 1 日から2007年12月31日までの12年間に,当院に入院した先天性心疾患に関係する感染性心内膜炎の患者10名(男性 6 名,女性 4 名).【方法】診療録記載内容から,基礎疾患,通院歴,罹患年齢,歯科治療の有無,起因菌,治療内容,転帰などにつき検討した.【結果】基礎疾患はVSDが 6 例(うち術後 1 例),TOF術後が 2 例,不完全型心内膜床欠損症,大動脈二尖弁各 1 例であった.VSDは術後の 1 名を除きほかは三尖弁pouchを伴ったsmall perimembranous defectであった.vegetationは 9 例(右心系 6 例,左心系 3 例)で同定された.静脈血培養では全症例で起因菌が同定され,その内訳はStreptococcus属 7 例,Staphylococcus属 3 例で,前者 7 例のうち 4 例がう歯の放置や歯科治療の際に抗生物質予防投与を受けていない症例であった.罹患時年齢は 5~54歳(中央値20歳)で18歳以上の成人例の占める割合が 7 例(70%)と多く,それら成人例の患者の多くは定期通院をしていない,または感染性心内膜炎に罹患するまで先天性心疾患の診断がなされていない症例であった.感染性心内膜炎の診断後,内科的治療のみで 2 例が軽快,外科的治療が 8 例に行われ,死亡例はなかった.【結語】先天性心疾患における感染性心内膜炎は,依然として口腔内常在菌を起因菌とした歯科歯周疾患に関係したものが多い.発症年齢は小児期より成人期に多くなる傾向がある.患者本人への教育を十分行うには成人後の定期的通院が欠かせない.

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