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当院における感染性心内膜炎症例の検討
国立成育医療センター循環器科
江竜 喜彦,林 泰佑,進藤 考洋,金 基成,金子 正英,磯田 貴義

【目的】感染性心内膜炎(IE)は成人先天性心疾患患者における主要な問題の一つである.当院におけるIE症例を検討し,傾向や今後の対応について検討する.【方法】2006年 1 月から2007年12月までの 2 年間で当科で加療したIE 4 例の発症形式,治療経過などを後方視的に検討した.【結果】4 例すべてが,先天性心疾患を基礎にもち19歳から29歳までの成人であった.心疾患はそれぞれ,心室中隔欠損症・右室二腔症,肺動脈閉鎖・心室中隔欠損症のシャント術後.肺動脈閉鎖・心室中隔欠損症の心内修復術後,心室中隔欠損症術後・大動脈弁閉鎖不全症であった.診断は,臨床症状と血液培養陽性などから診断した.発病から診断までの日数は 4~13日(平均 8 日)で,入院日数は11~64日(平均42日)であった.抗生剤使用期間は38~60日(平均39.5日)であった.診断時の白血球数,CRPは4,550~17,500/γl(平均10,045),5.0~10.5mg/dl(平均7.3)であった.すべて抗生剤治療のみで改善を認めた.CRPの陰転化までに要した期間は10~45日(平均24.7日)であった.起因菌はMSSAが 2 例,α-streptococcus・Streptococcus sanguinisが 1 例ずつであった.敗血症性肺塞栓の合併を 2 例で認め,1 例は不整脈の出現の精査によりIEが発見された.また,1 例は妊娠中であった.4 例すべてでIEの契機となるイベントはみられなかった.4 例中 2 例にIEの既往歴があった.【考察】すべてが先天性心疾患に合併した成人例で,患者たちにIEの危機感は少なかった.患者のIEに対する認識不足がIEの診断の遅れに関係している可能性がある.IEの早期診断のためには,予防法や症状等IEについての情報を患者に繰り返し伝える必要があると考えられる.

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