P-143
部分型房室中隔欠損症の成人 3 例の手術経験
九州大学病院小児科1),心臓血管外科2)
宗内 淳1),塩川 祐一2),中嶋 淳博2),田ノ上 禎久2),江藤 政尚2),山脇 かおり1),山口 賢一郎1),池田 和幸1),金谷 能明1),富永 隆治2)

【背景】部分型房室中隔欠損症(PAVSD)は成人期に至るまで無症状で経過し心内修復術を行う場合も少なくない.遠隔期僧帽弁逆流が問題となる例があり長期的なフォローが必要である.【症例 1】58歳,女性.45歳時子宮筋腫摘出術の精査でAVSDと診断され,56歳時から発作性心房細動を繰り返し心内修復術を行った.胸部X線:CTR 71%,心電図:心房細動,左軸偏位,右脚ブロック,心エコー図:左室拡張末期径(LVDd)45mm,中等度僧帽弁逆流(MR),中等度三尖弁逆流(TR),心臓カテーテル検査:Qp/Qs > 4.0であった.【症例 2】36歳,女性.4 歳時に心雑音のためPAVSDと診断されたが,その後ドロップアウトしていた.33歳ごろより労作時易疲労感が出現し心内修復術を行った.胸部X線:CTR 50%,心電図:洞調律,正常軸,心エコー図:LVDd 34mm,軽度MR,軽度TR,心臓カテーテル検査:Qp/Qs = 2.2であった.【症例 3】58歳,男性.57歳時に失神発作を契機にPAVSDと診断された.その後に再び失神発作を起こし完全房室ブロック(心拍数30/分)であったため一時的に体外ペースメーカによる管理を行った後,心内修復術を行った.胸部X線:CTR 58%,心電図:正常軸,完全右脚ブロック,心エコー図:LVDd 31mm,心室中隔膜様部に中隔瘤を認めたが短絡なし,中等度MR,軽度TR,心臓カテーテル検査:Qp/Qs = 2.6であった.【手術および経過】症例 1,2 は一次口欠損パッチ閉鎖と僧帽弁cleft閉鎖を行ったが,術後それぞれ中等度および軽度MRが残存した.そこで症例 3 は一次口欠損パッチ閉鎖時にパッチを小さくして一部中隔方向の弁輪縫縮するように工夫した.術後は軽度MRに改善した.【まとめ】成人期AVSD症例では弁尖や腱索の肥厚,短縮などの退行性変性が強くcleft閉鎖のみでは弁尖接合が不十分である可能性がある.一次口閉鎖のパッチを小児例に比べ小さくするなどの工夫が必要である.

閉じる