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Conventional Rastelli術後遠隔期心不全に対しLVAD装着した 1 例
東京大学医学部心臓外科
梅木 昭秀,村上 新,西村 隆,小野 稔,許 俊鋭,高本 眞一

【はじめに】修正大血管転位症根治術後の重症心不全に対し,LVAD(TOYOBO)を装着した症例を報告する.症例26歳男性,体重40kg.出生時よりチアノーゼを認め,5 歳時に修正大血管転位症{S,L,L}と診断.16歳時conventional Rastelli手術およびpacemaker(DDD)留置術を施行した.その後10年間で三尖弁逆流が悪化.NYHA III~IVとなり,26歳時に三尖弁置換術(SJM 33mm)を施行した.術後systemic right ventricular(SRV)failureが進行(EF 10%台).IABPやカテコラミン補助にても血圧低下,尿量減少が進行したため,第16病日にLVAD装着.一般的にLVAD脱血管先端は房室弁方向に向かうことで適切な脱血量が得られるが,本例では右胸心における左側のSRVに脱血管を挿入する際,右側のLV-PA conduitと脱血管の干渉を防ぐこと,脱血管挿入部位として適さないSRV心尖部のnon-compaction様のcyctic lesionを外すこと,置換後の三尖弁位機械弁との距離を保つこと,左室前面の心筋電極を損傷しないことなどを考慮する必要があった.そこで3D-CTにて術前より解剖学的位置関係を把握し,術中epicardial echoやcardioscopeを用い脱血管の挿入部位・方向を決定した.送血管は上行大動脈左側に端側吻合した.術後LVAD脱血量は 4l/分程度を維持し極めて良好で,3D-CTにて脱血管が機械弁方向に向かっていることが確認された.全身状態は急速に改善し,心臓移植の適応を検討中である.【結語】今後成人先天性心疾患(ACHD)心不全症例は増加すると考えられる.保存的治療が限界の症例では,心臓移殖のドナー数が少ない本邦においては,LVAD装着後,bridge to transplantとともにbridge to bridge/recoveryを検討することが選択枝となると考えられた.

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