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右室低形成に伴う非典型的な冠動脈瘻について
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野1),長岡赤十字病院小児科2), 新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科学分野3)
長谷川 聡1),鈴木 博1),沼野 藤人1),星名 哲1),羽二生 尚訓2),朴 直樹2),高橋 昌3),渡辺 弘3),内山 聖1)

【はじめに】右室低形成に伴う冠動脈異常としては純型肺動脈閉鎖(PA/IVS)に伴う類洞交通が知られているが,われわれは心室中隔欠損を伴う右室低形成に冠動脈瘻(CAF)を伴った症例と,当初確認されていなかったCAFが遠隔期に明らかとなり治療を要した右室低形成症例を経験した.【症例】〈症例 1〉診断は右室低形成,心室中隔欠損,肺動脈閉鎖,動脈管開存,CAF(LADとRCAからRVへ).2 歳時のFontan(lateral tunnel)の際にLADのCAF閉鎖術が施行された.その後buffle leakによるチアノーゼの増加が進行したため,11歳時にbuffle leakの閉鎖術が施行され,その際にRCAのCAF閉鎖術も施行された.〈症例 2〉診断は右室低形成(%RVEDV 29%),肺動脈閉鎖,動脈管開存.2 カ月時にBT shunt,ASD creationが施行され,1 歳 1 カ月時にfenestrated Fontanが施行された.術後ICU管理中に心肺停止を来し,蘇生には成功したが下大静脈が完全閉塞し,下半身から上大静脈への著明な側副血行路が形成された.5 歳ごろから拡張期雑音が聴取されるようになり,心カテでLADとRCAからRVへのCAFが確認された.CAFは徐々に拡大し,心筋血流シンチで虚血所見も疑われるようになったため,6 歳時にCAFのcoil embolizationを施行した.【考察】CAFは胎生期初期の心筋類洞が閉塞せずに冠動脈と交通をもった状態とされ,PA/IVSでは右室低形成の程度が強いほど類洞交通の合併が多いとされている.症例 1 では心室中隔欠損が小さく,右室も肉柱部と流出部のほとんどを欠く状態であり血行動態的にはPA/IVSに準じた状態であったためにCAFを合併したと考えられた.症例 2 は当初は気付かれていなかったCAFが徐々に成長したと考えられ,右室低形成症例の経過観察において留意すべき点と考えられた.【結語】PA/IVSに限らず右室低形成を呈する病態ではCAFを合併する可能性があり,また遠隔期にCAFが明らかとなる症例もあり得る.

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